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『稽古…ですか?』

「うむ。朽木殿のお孫さんのことは知っておるじゃろう?」

『はい…』


白哉のことか。
しかし、あの子なら私が稽古をつけるまでもなく十分に強いはずだ。
私の心のうちを呼んだかのように山じいは続けた。



「白哉のこともそうなのじゃが、もう一人いるのじゃ」

『新入隊士ですか?』



今年の新入りに目ぼしい者が居たかどうか思い返す。
少なくとも、十番隊にはいない。
もっとも、他の隊であったならその隊の隊長が鍛えるのが筋であろう。



「いや、今年霊術院に入学した者じゃ」



思わず目を見開く。
何故、今年入学したばかりの子をわざわざ隊長が稽古しなければならないのだろうか。
山じいと銀嶺殿は、とにかく一度会ってみろと言ったので、私はすぐに霊術院へと向かった。



「暁隊長、お待ちしておりました」



深々と頭を下げる霊術院の講師。
中には私が通っていた頃から居る者も居て、昔との扱いの違いに思わず苦笑する。



『今年入学した腕の立つ者とは誰だ』



そう問うと、すぐに連れて参りますと言って一人が部屋から出て行った。
やはりここは居心地が悪い。
席官になった頃から何度もやってきた特別講師の誘いも全て断ってきた。
それも全て、ここ霊術院に足を踏み入れたくなかったからだ。
出された茶を飲んでいると、先ほど出て行った講師が戻ってきた。
ともにやってきたのはまだ小さな少年だった。



「どうも、市丸ギンいいます」

『これは…まだ子供ではないか』



見たままの感想を述べると、講師たちは苦笑した。
一方の市丸と名乗る少年は表情の読めないような笑みを浮かべている。



「一度、この子と手合わせしてはくれませんか?」



一人の男にそう言われ、私は渋々鍛練場へと向かう。
さすがに学生相手に斬魄刀を使うわけにもいかないので、私は木刀、少年は浅打を手にした。



「隊長さん相手やったら全力でやってもええ?」

『当たり前だ。私の名は十番隊隊長暁優奈、全力で来い』



少年が斬りかかってくると同時に私も足を踏み込んだ。
まだ学生だとなめていたが、踏み込みも刀捌きもなかなかのものだ。
山じいが目をつけるのも無理はない。



『もう一度名を聞いてもよいか、少年』

「ギンや。市丸ギン」



これが最後と言わんばかりに私に向かって振り落とされた刀を指で受け止めると、私は少年の手から刀を叩き落とした。



「やっぱり隊長さんには敵わんなァ〜」

『お前はまだ学生だ。今それだけの力があればこれからまだまだ伸びるであろう』



私は少年にこれから毎日授業が終わったら十番隊に来るように伝えると、霊術院を出て隊舎に戻った。
隊士たちにもこれから毎日業務後に隊舎裏の修行場で学生の稽古をすると伝え、その日はすぐに自室に戻り休んだ。

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