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「鈴ちゃんがどうかしたのかい?」



京楽さんも何があったのかと首を傾げている。



「ええから早く!」



平子隊長は私の腕を掴み、瞬歩で部屋を出た。
連れて行かれた先は流魂街の外れ、私たちが幼いころによく訪れた小高い丘の上だった。
そこで私の目に入ったのは横たわっている少女。
ゆっくりと近づくと、それは紛れもなく鈴だった。



『鈴?このようなところで何をして…』



そっと触れると、その体は驚くほど冷たかった。
私は思わずその手を引っ込めた。



『嘘…だろう…?』

「優奈…さっき五番隊に虚が出たって出動要請が来てな、俺と惣右介が向かったんや。しゃあけど着いた時にはもう…」



鈴は虚に殺されたらしい。
霊力がないとはいっても全くなかったわけではなかったので狙われたのだろう。
私は鈴の冷たくなった身体をそっと抱き抱えた。



『鈴…何をしているのだ、鈴…鈴…』

「優奈…」

「惣右介、そっとしといてやれ」



それからのことははっきりとは覚えていない。
ただ、鈴の身体は徐々に私の腕の中から消えていった。
私はただひたすらに名前を呼び続けた。



「山じいには僕が連絡するよ」

「京楽さん…お願いしますわ」



隊長に就任して一週間、やっと強くなれてたった一人の肉親を守れると思っていたのも束の間、私は大事な妹を亡くした。



「目が覚めましたか?」



目を開けると白い天井が目に入った。
声のするほうを見ると、卯ノ花隊長がにっこりと微笑んでいた。



『卯ノ花さん…鈴は…』



卯ノ花さんは無言で首を横に振った。



『そうですか…』



これが夢であればいい、そう思って私は再び瞼を下ろした。
しかし、眠りにつくことはできず、私は起き上がって窓の外を眺めていた。



「入るよ」



声の主は惣右介だった。
どうぞというと、彼はそっと部屋の中に入ってきた。



「起き上がっても大丈夫なのかい?」

『別にどこも悪くないからな。私はどのくらい眠ってたのだ?』

「一週間だよ」



一週間か…
隊長に就任したばかりなのに、早くも隊に迷惑をかけてしまったな。



「隊のことなら心配いらないよ。平子隊長や京楽隊長、浮竹隊長が業務をやってくれているよ」

『そうか…申し訳ないな』

「皆君のことを心配しているよ。もちろん私もね」



惣右介がそっと私の前に立ち、私の視界は黒一色になった。



『惣右介…?』

「何故君は泣かないんだ…鈴ちゃんが居なくなって悲しいのだろう?大丈夫、私からは見えないよ」



その言葉を聞いて、私の目からは涙が溢れた。
たった一人。
私の唯一の肉親であった妹を失ったのだ。
隊長になったのに、私は虚から妹一人守ることができなかった。



『私は…私は…』

「君のせいじゃないさ。これからはもっと強くなればいい。これ以上、君みたいな思いをする人がでないように」



惣右介の腕の中は温かくて、私はしばらくその中で泣いていた。

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