「じゃあなんだ、お前は日本に帰国する時に手続きのミスで一年出遅れて、そんでもってもう一年を遊んで過ごしたってことか?」 「まあ、そんなもんですね。せっかく日本に帰ってきたんだしと思って遊びまわってたら、桜士郎と知り合ったってわけです」 「だからリカは俺達と同じ歳なんだよー」 会長は納得したのか、再び食事に手を付け始めた。 いつの間にか桜士郎も食事を始めている。 それにしてもこの学校に桜士郎が居るとは思わなかった。 昔とはかなり印象が違うな、なんて思っていたら桜士郎が私を見て笑った。 「リカは変わらないねえ。道理で皆が騒いでいるわけだ」 「は?」 「お前知らねえのかよ、女子生徒の内一人は純粋そうな可愛い子でもう一人はいかにも怖そうな奴だってな」 「何それ、失礼」 自分でもわかっているつもりだ。 入学前に琥太郎に言われはしたけれど、生憎私は向こうで自由にやってきたもんで今更日本の学校の風紀に馴染めるとは思えない。 「ま、リカが変わってたら俺はわからなかっただろうけどねえ。リカは俺が此処に居ることわからなかったの?」 「普段は使わないからさ」 「そうだね」 私達の会話を不思議に思ったのか、会長が首を傾げた。 桜士郎と顔を見合わせて笑うと、私はそっと会長の手に触れた。 「会長はもう一人の女子生徒のことを昔から知っている。でも彼女はそれを忘れている」 「お前……」 会長が目を見開いて私を見る。 その様子を桜士郎は楽しそうに眺めている。 「そしてもうすぐここにその女子生徒が来る。名前は夜久月子」 それから数分後、食堂に女生徒が現れた。 その人は真っ直ぐにこちらに向かってきて、会長に挨拶をした。 そして、私に手を差し出してにこりと笑った。 「はじめまして、天文科一年の夜久月子です」 「どうも、神話科一年の月城リカです」 女の子同士仲良くしようね、そう言って彼女は幼馴染であろう二人と去って行った。 会長はといえば、眉間に皺を寄せて私を見ている。 「リカ……なんで星詠み科に入らなかったんだ」 「会長、このことは内緒ですよ。桜士郎にも口止めしてあるんですから」 「しかもお前、過去のことまで」 「ちょっと特殊なんですよ、私は。それにコントロールならとっくの昔にできるようになっています。普段は使いませんよ。あ、食事御馳走様でした」 食事を終えて席を立つと、食器を片づけて教室へと戻った。 席について頬杖をつく。 目を閉じれば、これからの毎日は騒がしくなりそうだと溜息を吐いた。 「リカさん、授業始まりますよ」 「青空、会長から逃げるの手伝ってね」 何のことかわからないという表情をした青空をちらりと見て、次の授業で使う教科書を広げた。 星月学園、思ったより悪いところではなさそうだ。 ← back |