平助と一くんがいなくなってからの新選組といえば、静か……でもなくこれまでとそう変わらない日々が続いていた。 相変わらず総司が土方さんをからかって怒らせたり、食事中は新八さんが騒がしいし。 でも、やっぱり幹部の二人が抜けた穴は大きかったんだと思う。 「玲、千鶴知らねえか?」 『何かあったの?』 「アイツに客だ」 千鶴にお客さん? 珍しいと思って左之さんと屯所の入口へ向かうと、黄色い着物に身を包んだ少女と忍装束に身を包んだ女性が立っていた。 『左之さん、この子達中に通して。そんで土方さん呼んできて』 「いいのかよ、勝手に通しちまって」 『大丈夫、別にどこかの間者ってわけでもないし』 じゃあ、と渋々土方さんを呼びに行った左之さんの姿が見えなくなると、その二人――千姫と君菊さんを連れて私は広間へと向かった。 「貴方、私達のこと知ってるのかしら?」 『あー、まあ知ってるっていうか何ていうか……』 「もしかして千鶴ちゃんから何か聞いてるの?」 『まあそんなもんかな』 適当に誤魔化して広間に入ると、ちょうど土方さんも到着したところだった。 ものすごく怖い顔をして。 「玲、俺の許可もなく勝手に中に入れてんじゃねえ」 『まあまあ、この人達は千鶴の関係者ですから』 「だからってなあ……」 まだ何か言いたげな土方さんを無理やり座らせると、千鶴を呼びに彼女の部屋へと向かった。 千鶴を連れて広間へ戻った時には既に他の幹部も揃っていて、その様子を見た千鶴は少しだけ身を固くしていた。 そして、千姫は千鶴が鬼であること、そして自らも鬼であり、彼女の身を護るためには自分達について来るほうが安全であることを皆に話した。 その話を聞いた皆は、信じられないといったような顔をしていたが、結局は千鶴自身の判断に任せるということになり、千姫と千鶴は別室へと移動したのだ。 「玲はこのことも知っていたのか?」 重苦しい沈黙を破る土方さんの声。 私は静かに頷いた。 『はい、ついでに言っちゃうと、俺も鬼みたいです』 「は?」 驚くのも無理はないと思う。 けれども、以前土方さんに見られた私の驚異的な身体能力のことを思い出したのか、お前ならあり得るかもななんて失礼なことを言いながら納得したようだった。 「じゃあ何か、お前もアイツらと出ていくのか?」 『そんなわけないじゃん、俺は別に千景達に狙われてるわけじゃないし』 「女鬼なのに?」 『俺みたいなのは願い下げだって千景が言ってた』 それもそうか、と総司が妙に納得していたので一発殴っておいた。 私だって願い下げだよ、あんな高慢男。 「千鶴ちゃん、出て行っちゃうのかなあ」 『何、総司千鶴が出ていくのが寂しいの?』 「そんなんじゃないよ、綱道先生を探す伝手がなくなると思っただけ」 広間に残る面々がそれぞれ考えを巡らせる中、千鶴と千姫が戻って来た。 彼女の選択は新選組に残ることだった。 → back |