はあ、と溜息を吐く。 今日の夕食の時間、源さんが大坂からの知らせを持ってきた。 内容は山南さんが左手を負傷したというもの。 幸い命に別条はないが、もう刀を持つのは難しいかもしれない……人間のままでは。 『結局駄目なのかな……』 一応土方さんに注意するようにとは言ったけれど、そう簡単にストーリーを捻じ曲げることなんてできないのだと思った。 事実、山南さんは左手を使えなくなり、じきに羅刹となるだろう。 『くそっ』 地面に拳を突き立てる。 土が抉れた。 私の手に痛みはない。 「なーにやってんだ?」 見上げれば左之さんが笑っていた。 「山南さんのことだろ」 お前のせいじゃねえよ、と地べたに座り込んでいる私の頭を撫でた。 左之さんの言うように、直接的には私のせいじゃない。 でも、私は知っていた。 こうなることも、このことがどんな事態を引き起こすのかも。 『わかってる…わかってるけど俺は……』 「こうなることを知ってた、だろ?」 目を見開いて左之さんの顔を見る。 彼は困ったような表情をしていた。 きっと、言っていいものなのかどうか悩んでいたんだろう。 「土方さんから聞いたんだ、玲が変なこと言ってたってな」 『……知ってた。俺は山南さんが怪我することを知ってたんだ』 再び握りしめた拳が薄らと血で滲んだ。 それに気付いた左之さんは、私の手を取って両手で包んだ。 「それでもお前のせいじゃねえよ。土方さんも…山南さんも同じことを言うと思うぜ」 ぐいっと手を引かれて、私の身体は左之さんの胸におさまった。 あやすように背中を叩かれれば、自然と涙が零れてきた。 『ありがとう、左之さん……』 泣きたいだけ泣け、と彼は言った。 誰かの腕の中で泣くなんて、久しぶりだと思った。 → back |