「何やってんだ俺は……」 誰もいない庭で、一人空を見上げる。 今日も江戸の空は青い。 俺はあと何回この空を見ることができるのだろうか。 「これでいいんだ」 自分に言い聞かせる。 これでよかったんだ。 自分の弟のような総司と自分の惚れた女が幸せになる。 二人が幸せなら、俺にとってもそれは幸せだ。 俺には夢のような話でも、あの二人にはそれが実現できる。 少しだけ羨ましかった。 「副長」 「斎藤か。どうしたんだ」 「大丈夫ですか?」 俺の顔を心配そうに見る斎藤。 全く、コイツには敵わねえ。 いつも俺の後をひっついてきやがる。 「これでいいんだ」 「玲と総司、ですか……」 アイツ等のことを心配してるのは何も俺だけじゃねえ。 斎藤も平助も、離隊した新八と左之だって、最後まで心配してた。 そして、近藤さんも。 近藤さんにとっても総司は弟みたいなもんだから、俺以上にアイツを気に掛けてた。 「これですっきりしたな」 「そうですね」 「落ち着いたらアイツ等の祝言を上げてやらねえとな」 斎藤が少しだけ微笑んだ。 そんな未来が待っていたなら、どんなにいいだろうか。 いつかアイツ等の子供の顔を見て、総司にそっくりな生意気な餓鬼だったら俺が躾けてやらねえとな。 玲にそっくりな女子だったら将来が楽しみだ。 「さ、出立の準備するぞ」 「はい」 向かう先は下総の流山。 俺は武士として生きる。 だから、玲には普通の女子として生きてほしい。 そのために着物を贈った。 俺にできるせめてもの償いだ。 俺達の戦いに巻き込んでしまった、せめてもの償い。 そして総司にも。 アイツは今まで誰よりも近藤さんのために働いてきた。 汚れ仕事だって山のようにさせてしまった。 こんなこと言ったらアイツは怒るだろうが、アイツは俺の弟みたいなもんなんだ。 弟の幸せを願うのが兄ってもんだろ。 この戦いが終わったら、アイツ等の笑顔が見たい。 ← back |