寒さの厳しい年明け、お正月だということで新選組はいつもより少しばかり活気づいていた。
元旦には朝から酒をあおり、気が付けば夕方にはほとんどが酔いつぶれていてなんだかいつもの新選組じゃないみたいだった。



『皆、騒ぎすぎだって……』



広間で寝ている幹部連中を見下ろしながらぽつりと呟く。
起きているのはせっせと宴会の後片付けをしている千鶴と早々に広間を後にした山南さんくらいじゃないだろうか。



『おーい、一くん大丈夫ー?』



一番まともに片付けを手伝ってくれそうな一くんに声をかけてみるも、返事はない。
いつもなら彼が酔いつぶれるなんてことはないのに、いくらお正月とはいえ気を抜きすぎなんじゃないだろうか。



「玲さんはお酒に強いんですね」
『うーん、強いのかもね。というか、皆が阿呆みたいに飲みすぎなんだよ』
「ふふ、皆さん楽しそうでしたもんね」



片付ける手を休めずに千鶴が話しかけてくる。
本当にこの子は気が効く。
どこから持って来たのか、人数分の毛布を渡してくれた。



「このままだと風邪ひきますから」
『そうだね。皆にかけておこうか』



一人ずつに毛布をかけていくと、土方さんが薄らと目を開けた。
この人もまた、酔いつぶれたうちの一人だ。



「あ……すまねえな」
『お礼なら千鶴に言って下さい。皆飲みすぎなんですよ』
「お前だって飲んでただろうが」
『俺はトシさんみたいに弱いのに浴びるように飲んだわけじゃありませんから』



皮肉たっぷりに言うと、土方さんが少し眉をひそめた。
けれども、この状況だとそんな姿も怖いとは感じられない。
土方さんはゆっくりと腰を起こすと、残っていたお茶を手にした。



『温かいの淹れてきましょうか?』
「ああ、頼む」



土方さんと千鶴と、そして自分の分と三人分のお茶を手に広間へと向かう。
やっぱり他の皆はまだ寝ていた。



『ほら、千鶴も休憩しよ。片付けもほとんど終わったし』
「ありがとうございます」



三人でお茶を啜っていると、いつの間に目を覚ましたのか、総司がこちらに歩いて来た。
寒いのか、毛布を羽織っている。



『おはよ、総司』
「おはよ。この三人の組み合わせなんて珍しいね」
「他の奴らが起きねえからだよ」
『トシさんだってさっき起きたばっかりの癖に』



煩え、と一言漏らす土方さんに、総司が早速今年一発目の皮肉を言う。
そんな総司に土方さんは去年と同じように青筋を立てて怒る。
その様子を見て千鶴が遠慮がちに笑い、気づけば他の皆も起きだしていた。



「俺達に茶はねえのか?」
『飲みたいんだったら自分で淹れなよ』
「ちぇ、玲は冷たいなー」
「新八、俺のも頼む」
「あ、俺も!」
「てめえらは自分で淹れろ!」



いつものように三人が騒いでいると、一くんが人数分の湯呑を持って現れた。



「騒ぐな、頭に響く」
「さっすが一くん!」



年明け早々騒がしいなと思いつつ、静かに茶を啜っていた。


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