元治元年六月、だんだんと暑さを増してきた京の町を私と総司、千鶴は歩いていた。 要するに巡察。 『ねえ総司、千鶴って行動力あるよね』 「そうだね。さっきからひっきりなしに人に聞いて回ってるし」 歩いている人、店にいる人、手当たり次第に声をかけて回っている千鶴。 土方さんから外出許可が出てまだ間もない。 やっと父親を探せるとあって、張り切っているのだろう。 『何かいい情報あった?』 「いいえ……」 俯く千鶴にかける言葉を私は持たない。 すると、千鶴は再び走り出した。 「ちょっとあの人に聞いてみます!」 「千鶴ちゃん!?」 千鶴を追いかけようとする総司だったが、すぐ近くで浪士同士が揉めていることに気づくと舌打ちをしてそちらに向かった。 『大丈夫、千鶴は俺が見てるから』 「そ、頼んだよ」 とは言ったものの、千鶴の姿が見当たらない。 辺りをきょろきょろと見回していると、目的の人物を見つけた。 千鶴がいたのは枡屋の中。 このままでは危険だと思い千鶴に声をかけようとしたのと同時に店の中から声が上がる。 「おい!こいつさっきまで新選組と一緒にいた奴だぞ!」 このままではまずいと思い、刀を構えて店の中に飛び込んだ。 「貴様、新選組か!」 『だったら何だってんだよ。大人しくしてもらおうか』 「全く、君も僕もその子も運がないよね」 気がつくと楽しそうに笑う総司が後ろに立っていた。 その場で枡屋の主人を捉え、屯所へと向かう。 帰ったらきっと土方さんに怒られるんだろうな、なんて思いながら。 「てめえらは何してんだ!特に玲!」 『え、何で俺?』 「枡屋は泳がせて動向探れって言ったのはお前だろうが!それを自分が乗り込んでどうする!」 土方さんの怒りは専ら私と総司に向けられていた。 そう言えば去年の暮にそんなこと言ったなと思い返す。 そこで、私は重大な事件を忘れていたことに気がついた。 『トシさん、説教より先に吐かせたほうがいいんじゃない?』 この後に続く事件と言えばあの池田屋事件。 土方さんは怒り疲れたのか、舌打ちを残して部屋を出ていった。 ←→ back |