「お前は新選組にずっといる気なのか?」



屯所までの道すがら、千景に聞かれた。
残念ながら、今の私に新選組以外の居場所なんてない。
でもそれ以上に今の生活に満足しているというのも事実だ。



『そのつもりだよ。俺が必要とされている限り、俺は新選組にいる』

「そうか」



そう言った千景の横顔は、なんだか寂しそうだった。



「お前は覚えていないだろうが、お前は俺の嫁になるはずだった」

『は?ありえない』



突然何を言い出すのかと思えば。
千影の嫁なんてとんでもない。
そういえば、女鬼って貴重だったんだっけと思い返す。



「俺とて同じだ。お前を女として見るなど天変地異が起こらん限り無理だ」

『千景さーん、そこまで言わなくてもいいんじゃないっすかー』



ククッと笑う千景の顔は、なんだか懐かしい気がした。
記憶にはないけれど、やはり幼馴染なのだろうか。
やがて屯所の門が見えてきた。
さすがにこれ以上近づくのは危険だろう。



『じゃあ千景、ここで』

「門まで送る」

『大丈夫だって。女ならまだしも、男を襲う輩なんてそういないから』



今日はありがと、と千景に手を振り屯所に向かおうとすると、背後から声がした。
振り向くと、千景が何かを言っていた。



「また会おう」

『ああ、今度はゆっくり話聞かせてくれ』



今度は大きく手を振ると、小走りで屯所へと入った。
夕食の時間にはぎりぎり間に合ったかなと大広間に行ってみれば、案の定全員がもう揃っていた。


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