門の近くに見知った人影を見つけ、私は走って行く。 それにしても着物っていうのは動き辛い。 『左之さーん!』 そこに居たのは三馬鹿…もとい佐之さんと新八さんと平助。 三人とも目を丸くしている。 「お前…玲か?」 『ったく、他に誰がいるんだよ!俺は正真正銘、美空玲だ!』 失礼にもほどがあると思いつつ、平助の肩を叩く。 「へえー、お前ってやっぱり女だったんだな」 『左之さん、失礼だよ?』 「悪い悪い。着物着てる姿なんて初めて見たもんでな、似合ってるじゃねえか」 そう笑顔で言う左之さんは、やっぱり女たらしだと思う。 今までどれだけの女がこの笑顔に落とされてきたんだろうか。 「玲、行くぞ」 一くんに後ろから手を引かれて、私は屯所を後にした。 一くんが勝ち誇ったような顔をしていたのは気のせいだろうか。 『探れなんて言われても、何すればいいかわかんないっての…』 京の町をふらふらと歩きながら、私は呟く。 隣にはまだ何やらぶつぶつと呟いている一くん。 「玲は結婚しているのか…?」 『はあ!?』 突然の問いに驚く。 何をどうしたらこんな質問が出てくるのか。 「その…女のお前が元服をしたと言っていた故…」 『ああ、未来では別に結婚してなくても20歳を過ぎたら成人式っていってね…』 どうやら、私が成人式を元服のようなものと言ったことが原因らしい。 簡単に成人の説明をすると、どうやら私が結婚していないことを理解してくれたようだ。 『あ、あの店に入ろ!』 近くに甘味屋が見えて、私は一くんの手を引いた。 枡屋について探れって言われても方法なんてわからないし、とりあえず私は甘いものが食べたい。 せっかく街に出たんだし、これくらい許してもらわないと。 『一くん、これ美味しいよ』 「…もらおう」 注文した団子を食べながら、今から何をしたらいいのか一くんに問う。 すると、隣の席から聞き慣れた単語が聞こえてきた。 ←→ back |