晴れて新選組の仲間入りを果たした私は、自由に動き回ることを許可された。 一応女、そして訳ありだということで、今まで使っていた部屋が自室として与えられ、食事は幹部に混ざって取ることになった。 「ねえ、未来ってどんな風になってるの?」 縁側に腰掛けて、優雅に茶をすする。 自由に動き回れるとは言っても、京の地理に明るくない私は屯所から出ることはしなかった。 変に外に出て迷っても嫌だし、何よりこうしてゆったりとした時間を過ごすのが好きだった。 そして今、隣にはあの沖田総司がいる。 『どんなって、たぶん総司には信じられない世界だと思う』 「ふうん…具体的には?」 『人の足を使わなくても一瞬で文を届けられたりとか、馬よりもっと速い乗り物があったりとか。その仕組みは俺にもよくわからないんだけどね』 この世界に来て二月ほど経った。 慣れなかった袴姿や“俺”という一人称、そして男勝りの仕草にも慣れてきた。 最も、もともとそこまで女らしかったかと問われるとそうだとはいえないんだけど。 「未来って面白そうだね」 『面白いけどつまんないよ。生きてるのか死んでるのかわかんないような世界』 新選組の隊士となって、巡察にも同行するようになった。 私は特定の組に所属することはなく、宙ぶらりんな状態で仕事をこなしていた。 夜の京の町に出れば、人の死体を目にすることは一度や二度ではなかった。 日常的に殺人が行われる光景は初めこそ驚いたものの、今では驚きもしなくなった。 『まあ、平和なんてそんなものなのかも知れないんだけどね』 総司に向けてではなく自分に向けていった言葉。 生きるという意味を改めて考えた。 「玲、副長が呼んでいる」 総司とのんびりと茶を飲んでいたところに、斎藤一改め一くんがやってきた。 彼には時折稽古をつけてもらっている。 『わかった、じゃあ総司、いってくる』 総司に別れを告げて、一くんとともに土方さんの部屋へと向かう。 横にいる一くんの顔はお世辞ではなく綺麗だ。 女の私でも敵わないような色気があるというかなんというか。 「俺の顔に何か付いているか?」 『いや、一くんってイケメンだよなと思って』 「いけめん?」 平仮名で発音されたその言葉は、あまりにも可愛かった。 思わず噴き出す私を一くんは不思議そうな顔で見つめる。 『格好いいってこと』 「なっ…!」 顔を赤らめる一くんの姿は貴重だ。 無駄に顔のいいこの集団は、まさにイケメンパラダイス。 京で恐れられている人斬り集団は、私にとっては居心地のいい場所以外の何ものでもなかった。 → back |