07

望月と野々村


 がたんがたんと揺れる電車内。今、僕は久しぶりにもっちーと2人で下校中で、窓から外を眺めながらぼうっとしている。もちろんぼうっとしているのは僕だけであって、もっちーはなにか考え事してるみたいだけど。もっちーは、ぼうっとしないんだよ、隙がまったくないの。

 僕は普段、もっちーとは帰る方向が違う。だけど今日は一緒に帰っている。
その理由は僕のバイトに関係している。僕はヒョウ君(おにーちゃんのことだよ)のお店でバイトをしている。バイトとは言っても身内の店だから、手伝いみたいなものだけど。
そのバイトという名の手伝いをしているお店はいわゆるスナックというもので、ヒョウ君の奥さん、つまり僕の義理のおねーさんがママをしている。名誉のために言っておくけど、いかがわしいお店じゃないから!
 普段、もっちーと帰る方向が違うのはそれが理由。そのお店がもっちーの家の最寄り駅にあるんだぁ。だからたまに一緒に帰って、たまに別々に帰るの。
それで、僕がそこでバイトしてることを皆は知らない。いちおー未成年だから、伏せてるんだ。皆にはおにーちゃんの家に行くって言ってる。あながち間違っちゃいないよね。
ちなみに自宅に帰る時は中学の後輩と一緒だったり、1人だったり色々。特に決まってないかなぁ。


「ねぇねぇもっちー」
「外ではその呼び方やめろ」
「んじゃーレイチェル!」
「センス0」
「ぅへー、さすが本家毒舌。」
「は、本家?」
「んーそうそう。最近さぁ、あんこにもっちーの毒舌がうつってきたのー」
「…あいつのは元々だろ」
「え、そなの?」
「そうですよ」


へー、知らなかったなぁ。もうみんなに出会って1年も経ってるのになぁ。

「ところでさぁ、今日のあんこ変じゃなかったぁ?」
「…そうかァ?」
「うん。なんかねぇ、俺らが来た途端ほっとしてたもん」
「…よく見てんのな」
「やーんそこまで見てないよー? なんとなく雰囲気が変だと思ったってだけでー」

今日のあんこはなんとなく不思議だった。授業中とか昼休みはいつもどおりだったんだけど、放課後に会った時は心ここに在らず、みたいな感じで上の空だった。その後は逃げるように帰っちゃうし。

「…まあ黒田だし、悩んでたとしてもあんま根掘り葉掘り聞くなよ」
「えー」
「変にプライド高いから、なにかあったか聞かれても教えてくれねぇだろ、あいつ」
「あー…言われてみればそうかもー……」

あんこは変なとこで優等生的なプライドを守ろうとするから、相談とかしてくれないんだよねぃ。……もしかしたら僕だからしないのかも、そうだったらちょっと寂しいー。

「あんま余計なこと考えなくていんだよ、ののは。…頼られた時にしっかり支えてやれよ、おまえら同じクラスだし」
「…うん、そうする。首は突っ込まない…………、あ、でもそれなら、あんこの口に俺のちん」
「それも突っ込むなよ、あとここ電車だから少しは自重しろ」
「………むー。突っ込んでみたいんだけどなぁ、口に。」
「…なにそれ、フェラ願望?」
「まーねん、さすがにチェリーボーイじゃないけどさぁ、フェラってもらったことないし」

電車の中だけどそんなことには構わずにフェラという単語を口にする。周りに人居ないから、聞かれることはないはずだし、そんなでっかい声じゃないしー。

「…ヤッたげよか?」
「……………え。」

待ってよ、もっちー。
…今、なんつった。

「なに言ってんのー」
「……本気にすんなよ」

…………うわあああ、もう、本気で焦ったのにぃ。まさかまさかまさかのもっちーにフェラされるのかと思って冷や汗だらだらかいたのに。なんだ、冗談かぁ…よかったぁ。

「もーうー、焦ったじゃあん。一瞬で色んな汗かいたの初めてだよぉ?」
「…よかったな、珍しい体験ができて。記念に覚えとけよ」
「うん、おぼえとくー」

そう答えたら、もっちーは苦笑いしながら溜め息を吐いていた。僕が覚えておくなんて答えたせいなのかなって思ったらちょっと面白かった。


 その時もっちーは僕の頭をぽんぽんたたいた。けど僕には、その真意がわからかった。
 
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