03

黒田と野々村


「……だからこの文の"れ"は、尊敬じゃなくて、受身の助動詞"る"の未然形になるの、わかった?」
「……」
「…じゃあ"聞かすまじきなり"を分解して、文法的に説明して。」
「よっし。…えーっと…"聞か/す/まじき/なり/"になってぇー、…"聞く"の動詞の連用形と、尊敬? 命令? の…助詞? あれ?」
「…………。」
「"聞く"は動詞でしょ、だから"す"は…格助詞か!?」
「……………………。」
「てことはー、"まじき"は反実仮想? いや、ためらいの推量かな? で、"なり"は所在?」

「…ああもう! 全部違うよ野々村!!」
「うそん」
「うそじゃないよ、つか真面目にやってそれだけしかできないなんて……中学生やり直せば?」
「んまあー、あんこってば毒舌ぅ。もっちーの毒舌がうつったんじゃなぁい?」
「うつってない! 春休みなにしてたの、ちゃんと勉強した?!」
「したぬー」
「答え見ずにやったの?!」
「うん、答え見ずにやったら宿題が真っ赤っ赤になったよー」
「……努力はしてるのにねぇ…」
「実らない努力なんてないよ! たぶん!」
「なんか色々本末転倒だなぁ。…1年の時、野々村に現代語訳わからないっていわれた時は、こんなにできないとは思ってなかったからすっごくびっくりしたし。」
「てへー」
「…中途半端に似合ってるからやめて」
「…中途半端ならやめる」


「とりあえず、分解は合ってたよ。」
「やた!」
「で、も! それ以外が無茶苦茶。なんで"す"が格助詞になるの、助詞っていうのは、もっと付属みたいなものでしょ!」
「…"す"も付属だよ?」
「"す"は付属、助詞は付属の付属! わかった?!」

「は、はい。」
「"聞か"は未然形! "す"は使役の助動詞で終止形、"まじき"は打消推量か禁止で訳せばうまくいくからそうして、覚えて! "なり"は断定! あと、反実仮想とためらいの推量じゃなくて、ためらいの意志は"まし"! ためらいの意志なんて滅多に出てこないんだから覚えなくてよろしい! 打消と断定と過去と受身の助動詞だけは明日までには覚えて! じゃないと本当に赤点とっちゃうよ!!」
「は、はい、ガンバリマス」

「……本当に頑張らないと野々村、呼び出しされるよ? 今年のうちの学年主任って、国語科の先生でしょ、1組の。」
「うははー……実はねー、既に呼び出しされてんだよねぇ」

「……えぇ!!?」
「てへへへへ、ちなみに今からだよ! 心配無用、僕にはあんこという味方が居るから大丈夫ですって言ってくる!!」
「え、ちょっ、そんなこと言うの、本気!?」
「言うの! あんこは僕のものだー!」
「ちょ、待って、待ってってば……………、
待てやこのエロ阿呆ぉぉぉお!!!」





 
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