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「あほってなんだよ、あほって! 意味わかんねぇよ!」
「意味わかんねぇとか……やっぱお前あほですよ日野君」
「んなっ! あほじゃねぇし!」
「じゃあなんで俺に返信しとん? お前返信相手間違えて俺にメール送ってんだよばーか」
「な、んだと?!」

 午後1番の授業が新学期早々自習になってしまい、皆各々勉強したり、喋ったりしている。おれはというと、昼休みに望月から送られてきた意味不明なメールについて尋ねていた。
いや、それにしてもまさか、送り間違いだったとは。そう言われて携帯を確認すると、確かに。送信履歴に望月へメールを送った跡があった。相方であるのっさんと遅刻マニアな望月なんかを間違えたとは……。

「…つかなんで送信相手間違えたってわかったんだ?」

ふと思い浮かんだのはその疑問。あの返信内容だけで間違いだったとわかるなんて、どんなだ、どんな特殊能力持ちのやつなんだ。

「ののが言ってた。メールきたときちょうど、ののと居たんだよ」
「ああ、そういう………ってお前がのっさんを教室から持ってったのかよ!」
「持ってったってなんだよ」
「おれはお前のことをのっさんに愚痴りたかったのに! なのに居なかったのはお前のせいか!」
「俺のせいじゃねぇし。ののが一緒に飯食おうって誘ってきたんだよ」

……のっさんの裏切り者ぉ。おれの味方だって言ってたのに望月と一緒に昼飯食ってたなんて、ちくしょう。

「………あーあ。まあ? お前が持ってったんじゃなかったのか、なら仕方がない。許してやる」
「だから、持ってった…つーのはなに? 俺は連れていかれただけだし」
「いやでも、そんな感じだろ? 望月って、のっさんを簡単に連れていきそう」
「………」

 のっさんが裏切ったのはもうなんか、仕方がない。望月なんかに相方としての絆が切られるわけないし。
それよりも今は黒田だ。この自習時間が終わればSHR、それですぐに放課後。黒田と一緒に帰らないと。頼まれたからっていうのもあるけど、やっぱり元気がないんだって聞いてしまったし、気になる。あの時、おれの方を見なかったことも、気まずく感じたのはおれだけだったのかということも。でも少しだけ緊張する。また気まずくなったらどうしようとか、あんまり根掘り葉掘り聞くのはよくないよなぁとか。どうすればびしっと決まるのだろうか………いやいやなんか表現がおかしいぞ。別に相手は黒田だし、びしっと決めなくてもいい。むしろ決めたら怪しまれる気がする………その事実も悲しい。びしっと決めずに、自然に聞くのがやっぱり1番いいかもしれない。よし、そうしよう。それで、なにもないって言われたらその話はもうやめにしよう。そうだ、そうしよう。



「日野って案外鋭いよな」
「……え、なにがだ?」
「…日野が、だ」
「………?」

 気が付くと、望月がこっちを無表情―――つまりは普段のポーカーフェイスで見ていたんだけど、その表情さえおれよりちょーっとイケメンなのが滲み出ていた。そしておれは、望月に目を逸らされたことはムカつくけど、見られるのもいやだということに気付いた。
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