03




 教室に着いてからすぐにチャイムが鳴った。あぶなかった、もう少しで遅刻だった。
ほっとしながら出席番号順の席につくと、前からプリントが回ってきて、今日の予定を聞かされる。あの人が担任か、平岡先生がよかったなと思いながらも寝ずに聞くおれは優秀だと思う(平岡先生っていうのは去年来たばっかりの23歳の英語の先生)。ちなみにおれのクラスの1組の担任は沼田先生。既婚者で成人済みの子持ち。




「……なので、明日からは配布した時間割通りとなります。質問などございま…」

「…はよ、ございます。すみません、遅れました」
「おはよう、望月くん。遅刻届は貰ったの?」
「はい。」

 来た。
望月のやつが来た。来やがったあああ! なんで先生が連絡してるタイミングで学校に来るんだよあいつ。クラスの視線独り占めじゃねぇか! 女子とかめっちゃ見てるし、顔赤くしてるし、なんなんだよお前望月ぃぃぃぃい! ちょっとおれよりイケメンだからって調子乗んなよああああ!
反省した様子なんかちっともない望月は、自分の席に向かっていた………つーかあれ、なんかおれの方来てるよな、なんでこっちに……ってお前おれの隣の席かよ! 隣空いてるけど誰だと思ってたらお前かよ! 出席番号順に並ぶのやだきらい!!
女子の視線を独り占めしてる望月を睨んでやると、望月はちらっとこっちを見ただけですぐに逸らしやがった。喧嘩売ってるとしか思えない。あとでのっさんに愚痴ろう。



* * * *




「黒田ぁ!!」
「お、日野じゃん」
「日野君、どうしたの?」

 昼休み。のっさんに愚痴ろうと思って2組に来た。廊下から教室の中を覗いてのっさんを捜してたけど見当たらないから、仕方なく黒田を呼んだ。いや、黒田の名前を叫んだ。
そうしたら去年のクラスメイトやら顔見知りやらがわらわらおれの方に来て、黒田への道を阻む。

「ちょ、お前ら邪魔! おれは黒田に用があんだよ!」
「日野くんってば黒田になんの用? あ、わかった! 勉強教えろ、とかでしょ?!」
「日野が勉強について誰かに聞くわけないだろー!」
「うっせ! いいからどけって。また今度しゃべろーぜ」

邪魔だとは言ってもわざわざ声をかけてくれるのは嬉しいので、笑いながらそう言った。絶対だよーと言って笑う女の子達は可愛いし、元クラスメイトの男子はまた遊ぼうなーって言ってくれて、嬉しく思う。
そうやって機嫌が良くなったのは確かだけど、黒田の近くに行って、黒田がつんとした顔でこちらを見向きもしないのが、なんとなく気に掛かった。


「黒田、のっさん知らね?」
「さあ?」
「そっか」
「…」
「…」

……なんだこの気まずい雰囲気は。あれ、いつもどんな感じだったっけ、黒田とおれっていつもこんな感じで喋ってた……?
黒田はおれが声をかけても尚、こちらを見向きもせずに弁当を食べている。気分が悪いわけでも無さそうだし、機嫌が悪いわけでも無さそうだし……どうしたんだろうか。
 
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