02

そこに、前方から1年の時からつるんでるやつが来た。黒田明空(くろだあずき)だ。

「日野、おはよう」
「あっ、おっす、黒田。もしかして2年も眼鏡で過ごすのか?」
「お前らとつるんでたら嫌でも悪目立ちするからね」
「贔屓狙いか」
「当たり前でしょ」

黒田は呆れた顔をしてそう答えた。呆れられるのは、おれが何度も眼鏡を外さないのかと聞いているからだ。答えはいつも同じでノー。コンタクトにしない理由として、内申目当てとか優等生ポジションだからとか言っている。ほぼ眼鏡をしているから、それをとった黒田はどんな風に見えるんだろうとかちょっと気になる。プールの時間はさすがにとっているけど、おれ自身がプールでは裸眼(普段はコンタクト)なのでどんな顔をしてるのかはあまりはっきり覚えていないのだ。男が男の顔をまじまじ見るのも、気持ち悪い話だしな。

「お、黒田じゃん。おはよう」
「はよー、あんこ」
「おはよう小池。…野々村はいい加減さ、おれのこと"あんこ"って呼ぶのやめて。もう2年だしさぁ」
「うぇ、んじゃあクロちゃん!」
「………あんこでいいや」

黒田はまた呆れたような顔をして、明後日の方向を向いてしまった。敢えて空気を読んでいないのか読めていないのか、のっさんはへらへら笑ってる。小池は同情の視線を黒田に送っていた。

「んでね、あんこー。もっちーはどったの? ちこく?」
「望月なら朝食まだだって言って、カロリーメイト買いに行ったよ」
「遅刻だな」
「遅刻決定だな」

あいつは進級初日から遅刻ってああああ!! 何様のつもりなんだよ望月! クラスで目立ちたいのか、初日に遅刻してきた望月君って印象を与えたいのか! そんなにモテたいのか!!
おれが望月の社長出勤に憤慨してると、"遅刻してきた望月くんって印象良くないよねー、別にモテないよねー"とのっさんが黒田に言っていた。のっさん……、

「のっさんは望月の味方なのかよ?! おれというものがありながら!」
「そんなことないお! 僕はいつでもどこでもひのっちの味方だお!」
「のっさん…っ!!」
「ひのっち……!」

2人で目をきらきらさせながら抱き合う。ここは廊下の真ん中だし、小池と黒田が見知らぬフリをして先に教室に向かってしまったけどそんなの知らない。彼女欲しいし、合コンもしたいし、やっぱりモテたいとも思うけど、今はのっさんとかと一緒に居たい。おれって恋愛より友情を大事にしたいタイプだし、たぶん。
彼女を作るなって言いたいわけじゃないけど、のっさんもそう思ってくれてると嬉しい。


「……じゃ、ひのっち。そろそろ教室行こっかぁ」
「だな」

 俺とのっさんが歩くと、色んな視線を向けられる。のっさんは金髪だし、おれに至っては灰髪で、2人共それなりに身長があるしイケメンだからそれは無理もないことなんだけど、はじめはその視線が辛かった。おれの灰髪は地毛だから染めてもあまり意味がない。クラスメイトはともかく他人からの目が怖かった。帽子無しでは街中を1人で歩けなかったし、背後でコソコソ話している声にも怯えていた。
だけど高校でのっさんに出会って、自分と並べば全然目立たないよ、って言ってくれて。根本的な解決にはなってないし、逆に目立つことになってしまっているけど、それが嬉しかった。
 こんな風に馬鹿やってるのが物凄く楽しくて、やっぱ恋愛より友情だな、と思った。
 
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