私のもらった部屋には天窓があって、朝はそこからたくさんの光が入ってくる。私はその明るさに促されていつも目覚めていたのだが、その日は違った。まるで何かに押しつぶされているように息ができないのだ。重たい。うなされながらふと目を開けると、目の前に兵助の顔があった。

「兵助っ!?」
「おはよう名前」

あわてて起き上がると私の上に乗っていた兵助がベッドから転がり落ちた。そしてふと隣を見ると勘ちゃんが笑いながら三郎の上にのしかかっている。三郎はうなされているがまだ眠っていた。これは一体どういうことなのだろうと考えて全身から血の気がひいた。

「…今、何時?」
「十一時」

ベッドの横で不機嫌な顔をして仁王立ちをしているハチが答えた。ちなみに今日皆が家に来ると約束した時間は十時である。私はベッドの上で正座をして皆に謝った。

「寝坊しましたごめんなさい!」
「びっくりしたよー、雷蔵が合鍵持ってるから家には入れたけど二人とも寝てるんだもん。しかも同じベッドで」

勘ちゃんはにこにこしながら三郎の鼻をつまんでいる。怒って、はいないけどその笑顔が怖い。三郎はというとさすがに鼻をつままれて目を覚ました。

「…なんで勘右衛門が俺の上に…」
「三郎おはよう。もう十一時だよー」
「…あー…寝過ごしたのか…ごめん」
「いや、いいよいいよ。まだお昼じゃないしね。俺たちリビングにいるから着替えてきなよ」

そう言うと勘ちゃんはまたベッドにのぼろうとしていた兵助の首をつかまえて部屋を出て行った。そして部屋に残されたのは私と三郎とハチで、しばらく三人とも黙っていたがハチが最初に口を開いた。

「…お前ら付き合ってんの?」
「いや、違うけど」
「じゃあ何で同じベッドで寝てんだよ…ホラ、三郎、正座してちゃんと話聞け」

ベッドの上で正座している私たちに向かってハチは神妙な面持ちでお説教を始めた。

「いいか名前、三郎。ふつう付き合ってない奴らは一緒のベッドで寝ない」
「真面目だな八左ヱ門は…」
「そこがハチのいい所だよ三郎」
「お前ら真面目に聞けよ!」
「まあそう怒るなよ八左ヱ門。これからは気をつけるって」
「本当だな?名前もわかったか?」
「うん、わかった。…そういえば雷蔵は?」
「ん?あー、なんか二人が寝てる間に料理つくるとか言ってたぞ」
「何!?」

ハチの言葉を聞いた三郎は顔色を変えて台所へ走って行った。が、しばらくして台所の方から「雷蔵!そこ!そこに計量カップあるから!…っあー!!」という悲鳴が聞こえてきて私はハチと目を見合わせて苦笑いした。

「じゃあ俺もリビングの方行ってるから早く着替えてこいよ」
「うん。寝坊しちゃってごめんね」
「それは最初っから怒ってねぇよ。…それより今日からは一人で寝ろよ?」
「はい。でもホントに一緒に寝てるだけだよ?」
「わかってるよ。でもあんまり二人でべったりになるといつか困るぞって言いたかったんだ」
「?…うん、わかった」

ハチが部屋から出て行った後、着替えながらさっきのハチの言葉がどういうことなのかしばらく考えていたがよくわからなかったのでまあいいかと思い直し、私は賑やかなリビングに向かった。

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