高いところから街をみるのが好き。
夕方から夜にかわる時の街の変化が好き。
太陽がしずんで空が暗くなって、建物の灯りがいっせいにつく。
その風景をまるごと飲み込むみたいにして目に焼きつけてぼくは、

3、2、1、目を閉じる。
1、2、3、目を開ける。

そのたび世界は滅びている。
ぼくが目を閉じるたび世界は滅びて、……目を開けるまでの3カウントで再生する。まだこの星が赤ちゃんだったころから今までの進化の歴史をたどって、何も間違えないように慎重に再生する。そんな想像が好き。ばかみたい?そうかも。きっとね。

でもこれ一回やるとすっごい快感、やめられない!
ぼくが目を閉じるたびに世界はぼくを置き去りにしていなくなっちゃう。
ポケモンもノボリもバトルサブウェイもみんなみんな。
この世界にはぼくしか生き残ってないんだ。どこまでだって世界はぼくのもの。
それはすごく素敵で怖くて不安で……少しほっとする。

3、2、1、目を閉じる。

このまま目を開けなければ世界は、この街は、ぼくは、どうなるのかな?
ぼくこの街が大好き。いつもにぎやか、終わらないパレードやってるみたいな街。
一日中遊んでバトルして、つかれたら少し眠って。
そんなのがみんななくなっちゃう。それって取り返しがつかないこと。
でも取り返しのつかないことって、なんでかな、すっごく惹かれるときがある。
心のどこかでそういうのを望んでるのかもしれない。変なの。
……もし本当にそうなったとしたら耐えられないくせにね。

1、2、3、目を開ける。

街にあふれてるネオンの光がきれい。ずーっと見てたいくらい。
あの光をひとつずつつまんで手のひらに乗せて見たら面白いだろうな。
でもそろそろいかなくちゃ。うん、もう時間。
立ち上がってコートをはたいてたら強い風が吹いてきて少しよろけて、でも、
ぼくの足はしっかり踏ん張った。…取り返しのつかないことにならないように。
それがなんだかおかしくて思わずあははって笑った。
本当は知ってる。ぼくが欲しいものがなんなのか。でも誰にも言わない。
「ほんとう」がいいことで正しいものだとは限らないから。
さあパレードにもどろう。楽しくてどうかしちゃってて夢の中にいるみたいな、

ぼくの毎日。ぼくの日常。ぼくの戦場。