かれこれ二日ほど風呂に入っていない。

これといった理由はない。ただ、昼過ぎに起きてそのままカーテンもあけずにだらだらと時間を過ごし、夕方頃にカップラーメンかなんかを食って、ゲームやって、夜が明ける頃に眠る。
そういう生活がたまたま二日続いたというだけの話だ。
流石にそろそろ色んなところがかゆくなってきたなあと頭をかいたあと何気なく頬をなでると手のひらにじゃりじゃりした感触。大分髭も伸びたみたいだ。
今日は風呂、入ろう。
そう思っていたはずが、気がつくとゲームのコントローラーを握って床に転がったまま三日目の朝、いや、夕方を迎えていた。
どうしてこんなことになったんだろう。そう、確か風呂を沸かしてる間に鉢屋から電話がかかってきて、そんで話が長くなりそうだったから電話しながらゲーム始めて、
ようやく電話を切った時にはもうすっかり風呂がぬるくなってたからそのままゲームを続行したんだった。それでいつの間にか寝ちゃったのか。
当然っちゃあ当然だけど体中が痛い。ぎこちなく首を左右に曲げながらカップラーメンの蓋をあけてお湯を注いだ。
シンクの中には三日分のカップ麺の容器と洗ってないコップと箸が散乱していて、極力そちらを見ないようにしながら箸をくわえてラーメンと共に居間兼寝室へ移動した。あー、もう、部屋もきったねえなあ。灰皿から吸い殻あふれてるし脱ぎっぱなしの服がそこら中に落ちてるし。
もうどーしよ。ずるずるとそこらに汁を飛ばしながらラーメンを食べ終えて久しぶりにカーテンをあけて外を見た。
夕方とはいえ久しぶりに浴びた日光の強さで眉間のあたりがしくしくと痛む。反射的に閉じたまぶたをおそるおそる開けて空を見上げる。
今日もどうやらいい天気だったみたいだ。空に浮かぶひつじ雲は桃色に染まっていて、その隙間からうっすらとした光がさしこんでいた。

天使でもおりてきそうな感じじゃんなんて思いながらしばらくぼーっと空を見ていたが、子供のはしゃぐ声と足音がいくつも近づいてくるのに気がついて視線を空から地面へと戻す。部屋の外の申し訳程度の庭、のような空間と、そこを囲う垣根の向こうの細い道路を走って行く小学生たち。おーおー楽しそうだなあ。そうだよな、今日連休最終日だもんな。遊びつくさないとな。俺が小学生の頃は毎日友達とスーファミ三昧だったよ。まぁ今も大して変わんないけどね。せっかくの連休をゲームでつぶしたダメな大人です。…あの頃は大人になったらゲームなんてやらなくなるのかと思ってたけど、まあ、そんなことはなかった。うん。
よし、ちょっとコインランドリーでも行こうかね。柄にもなく感傷的な気分になった自分に苦笑いを浮かべながらそこらに散っている服をかき集めて、そういえばTシャツにパンツいっちょだったことを思い出してズボンを穿いて外へ出た。
三日ぶりの外。ぐぐっと伸びをしながら深呼吸をした。あーあ、なんかよく分かんないけどすげー自由な気分。通りすがるおねーさんやら子供やらに、俺もう三日も風呂入ってないんだぜーと心の中で妙な自慢をしながらてろてろとコインランドリーへ向かって歩いた。
そうだ、夕飯は牛丼買って帰ろう。それ食ったら部屋の掃除。明日からまたいつもの毎日だ。