003:諦める 





あれは正に一目惚れだったと思う。
瓦礫の山を見上げて佇むグリーンさんは、整った顔立ちに似合わない、物憂げな表情をしていた。その憂いを帯びた表情に、惹かれた。
ジムを訪れた時、彼の内面にほんの少し触れた気がした。電話越しに鼓膜に響いた声に、何度も鼓動は跳ね上がった。再戦した時に見た真剣な表情が…その後に見た満面の笑顔で、僕は既に恋に落ちていた。
まさか、自分が同性に恋するとは思わなかった。僕は今まで、自己に疑問を抱いたことはなかったけれど、この時ばかりは自分の性癖と、自分自身を疑った。
悩む僕を見かねたコトネが、相談相手になると申し出てくれた。僕が躊躇いながらも、悩みを口にすると、コトネは、僕を気持ち悪がる訳でもなく、すんなりと受け入れてくれた。そして、一言。
「大丈夫だよ。誰を好きになっても。誰かを好きになるって、大事なことなんだってママが言ってた。…だから、ヒビキくんのその気持ちも、大事にしなきゃいけない。無理に嫌うことなんかないよ」
その言葉で、その笑顔で、一気に肩の荷が降りた。すっと、身体が軽くなる様な感覚に、僕は思わず泣きそうになった。
…けれど。
「諦めよう」
部屋に入る前に、小さく呟く。壁越しに聞こえる男女の談笑。ひとつは、大好きな彼もの。もうひとつは、彼の幼馴染みの女の子のもの。
「…諦めるんだ」
自分に言い聞かせる。心はまだ首を縦には振らないけれど、無理やり納得した。グリーンさんの傍で笑っていられるなら、幸せ。その場所が、たとえ隣じゃなかったとしても。位置も距離も関係ない。
だから。
今日も僕は笑顔を作る。僕が浮かない顔をしていたら、きっと優しいグリーンさんは心配するだろうから。
ドアを叩いて、中に入る。泣きそうな表情の僕は、もうどこにもいないはずだ。



あなたの笑顔が見たいから、諦める





▼初グリヒビ。切ない系ですが、リーフさんとグリーンさんはデキてないんで、ヒビキくんが諦める必要はないんです。ってか、絶対グリーンさん両刀だって。二次元イケメンはみんなバイだと信じてる((



[目次]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -