010:惚れる 





ジョウトとカントーを制覇した僕に、知らない景色などないと思っていた。もちろん、ポケモンの力を借りても、行けない場所はある。それでも、行ける場所はほとんど行ったはずだ。
そんなのが驕りだと知ったのは、つい最近の話だ。
「ダイヤモンドダスト?」
僕が反芻した言葉に、彼は無言で頷いた。
「テレビで見たことあります。キラキラして綺麗なんですよね?」
僕の言葉に、レッドさんはまた頷いた。
「でも、それがどうかしたんですか?」
「…今日、見られるかも」
「え?」
ポカンとした僕の手を、レッドさんは掴んだ。状況がよく飲み込めぬまま、手を引かれる。この人が、僕に対して、こんなに強引になったのは初めてだ。
洞窟を出て、立ち尽くすと、吹雪は止んでいた。代わりに、ダイヤを砕いて撒いた様な光景が、僕らを出迎える。朝日に照らされて、光輝く小さな結晶が綺麗だ。何もかもを忘れて、息を飲む。
「ね?綺麗でしょ」
「昨日、泊まってけって駄々をこねたのは、このためだったんですか」
こくりとレッドさんが頷いた。
「ポケモン達が、今日見れそうだって教えてくれた」
「だったら、事前に一言言ってくれればいいのに…」
ため息混じりにそう言うと、レッドさんは眉を少し下げた。
「…がっかりさせたくなかった。ヒビキの悲しむ顔、見たくなかったから」
「…僕ががっかりしたとしても、レッドさんが悪いんじゃないでしょう。僕が勝手に期待しただけなんですから」
「…それでも、嫌」
僕はどぎまぎとした。僕ってちゃんと思われているんだと、改めて再認識した。まさかここまで愛されているなんて。
「でも、良かった。ちゃんと見ることができて」
嬉しそうに彼は笑った。僕もつられて笑う。
彼の隣で見る細氷は、今まで見たどんな景色よりも綺麗だった。



あなたと見る景色に、見惚れる




▼…そろそろネタ切れがマズいぞ、アイラ。お題があらぬ方向へ、カットビング!!←
…もっとキャラ登場させよう。CPのバリエーション増やして、様々なシチュエーションに対応するんだ、俺。



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