sleepyhead 





※元拍手文。ED後設定。ユーリ+フレンですが若干腐向けくさいです。





久しぶりに休みが取れたので、ユーリはとある人物の下を訪れていた。ヒピオニア大陸・オルニオン。今や立派な街を見渡して、ユーリは軽く息を吐いた。
(元々は何もない野原だったのにな…)
そう思って、改めて人間の逞しさと共に、自分の片割れの凄さを実感して、少しだけ誇らしい。そんな自分が少し馬鹿らしくもあるのだが。
騎士団の詰所に行くと、入り口の近くに騎士が立っていた。背格好から、その騎士が昔馴染みであると判断する。
「よっ、アグエロン。元気か?」
「ユーリか。久しぶりだな。お陰様で何事もなくやってるよ。…そういうおまえは、その様子じゃ相変わらず、好き勝手にやってるみたいじゃないか。あまりフレンに心配かけるなよ」
「来世では気をつけるわ」
そんなユーリの態度に、アグエロンは肩を竦めてみせた。ユーリが勝ち誇った笑みを見せた。
「おまえには敵わないな。こんな友人をもったフレンに同情する」
「お褒めに預かり光栄だ。…で、そのフレン様は、どちらにおいでで?」
ユーリが訊くと、アグエロンは宿屋の方を指差した。見ると、確かに遠くからでも目を引く金髪の騎士がいた。
「今、現場の指揮をしてる。…たまには休む様に進言するんだがな。あいつ、ワーカーホリックの気があるんじゃないか?」
「…やれやれ」
ユーリは呆れ果てる。恐らくそんな状態じゃないかと思い、来てみれば案の定だ。
「ちょっと、騎士団長借りるぜ」
「ああ。連れてけ。おまえには、この街の件もあるしな。周りには、適当に言っとくよ」
「サンキュな」
ひらひらと手を振って、ユーリは街の東の方へ向かう。目的の人物はすぐに見つかった。部下の騎士に指示を出し終え、その様子を見守る幼馴染みに、気配を殺して近付いた。そして、後ろから手を伸ばした。
「うぁっ!?」
二の腕で首を締め上げてやる。彼はかなり驚いたらしく、目を白黒させている。
「ユー…リッ!?なっ…止め…」
「もう参ったかよ、フレン?まだ10カウント数えてないぜ?」
「ギ、ギブ…アップだ…!!だから…止め…」
フレンが本気で苦しみ出した。知らず知らずに、力を込めすぎたらしい。あっさりと解放してやると、フレンは体制を崩して膝をついた。
「…っ、この…」
「簡単に背後をとられる方が悪いんだよ」
膝をついたフレンは上目遣いで睨むが、ユーリは不適に笑むだけだ。フレンは息を吐いて、立ち上がった。
「まったく…久しぶりに会ったというのに。君は挨拶の仕方も知らないのか?」
「礼儀が必要な奴には、ちゃんと挨拶するさ」
「………」
フレンは、もう一度ため息を吐いてみせた。しかしそれだけで、それでとユーリに訊ねた。
「今日はどうしたんだ?」
「いや、久しぶりに休みが取れたから、色男の面を拝ませてもらいに、ね」
「………」
フレンの眉が寄った。踵を返して、
「生憎、僕は君ほど暇じゃあない。冷やかしなら、帰ってくれ」
背中を向けて歩き出すフレンの手を、ユーリは掴んだ。
「冗談だって。時間はとらせねぇから付き合えよ」
「…」
しばらくは疑惑の目を向けられるが、わかったとフレンは向き直った。街の西に向かって歩き出した。
「で、話って?」
「おまえが働き過ぎって話」
「ああ、そんなことか」
何でもない様に、自らのことをそんなこと等と言い捨てるフレンに、ユーリは半ば呆れた。額を押さえ、おまえなぁと言ってみせると、フレンは毅然とした態度で、
「休む暇なんてないよ。まだ世界には、助けを必要とする人々がたくさんいるんだ」
「だからって明らかに働き過ぎだろ、おまえ。ワーカーホリックだって、アグエロンも心配してるぜ。若いからって無理し過ぎると、後々響くっておっさんも言ってたし」
「僕のことを心配してくれるなら、君ももう少し行動を慎んでくれないか」
「おまえは俺の母親か」
「こんなに手のかかる子供なんて、願い下げだよ」
互いが互いの主張をして、相手の主張を受け入れられない。ユーリはやれやれと項垂れた。
(こいつ、また一段と石頭をかたくしてやがる………どうしたもんだか)
心中で毒づいて、再度口を開いた。
「根を詰めるのもいいけどな、ほどほどにしろ。おまえ、ろくに寝てねぇだろ?」
「…別に、そんなことは───」
「じゃあ何でさっき、俺は簡単に背後を取れたと思う?」
「………」
フレンが口をつぐんだ。ユーリは鞘におさめたままの愛刀をフレンに向け、その首を切る様に軽く横に払ってみせた。
「俺が刺客なら、おまえはもう死んでる。………評議会も、おまえを疎んで狙ってんだろ。そう簡単に隙を見せるな」
「………」
「───って、らしくもなく説教してみたけどな。もうこんなこと、俺に言わせんなよ」
ユーリが肩を竦めて、苦笑した。フレンは素直に頭を垂れた。
「すまない」
「謝るのは筋違いだ」
「…ありがとう」
「───それも筋違いだ」
「じゃあ、何て言えばいい」
フレンが笑った。ユーリは、その場に座った。
「何も言わなくていーよ」
「そうか」
フレンも隣に座った。空は曇天で、肌寒い風が吹いてきた。
「これは、降るかもしれないな」
「げっ…雨かよ?」
「いや───これは、多分───雪じゃないかな」
雨の心配をしたユーリだったが、フレンに否定され、ほっとした。フレンは空を仰いでいた。
「ここにいるのも長くなったからね。結構、わかる様になったよ。割りと当たるんだ」
「へぇ、そりゃいいな。何かコツでもあんのか?」
「コツというか───」
他愛ない会話の合間に、不意に、背後でフレンを呼ぶ声がした。騎士団長、騎士団長と、誰かがフレンを探し回っている。
「…もう行かなきゃ」
呟いて、立ち上がりかけたフレンの手をユーリが掴んだ。
「居ろよ。ろくに休んでないんだ。たまにはサボっても、誰も文句言わねぇって」
「…ユーリ」
咎める様にフレンが名を呼んだ。しかし、ユーリは手のひらに、更に力を込めただけで。
「……参ったな」
頭に手をやって、フレンが言った。実際、彼は困り果てていた。
「じゃあ、俺が駄々こねたってことでいいから」
「時間はとらせないんじゃなかったのか?」
フレンは少し眉をひそめてユーリを見ていたが、やがて座り直した。やれやれと首を振り、
「手のかかる駄々っ子だね」
「将来、どんな子供を授かっても困らねぇなっ?」
「………」
フレンは何も言い返す気にならず、無言を返事とした。ユーリが勝ち誇った笑みを見せた。
上から、ハラリと白い物が降ってきた。ユーリが手を翳すと、じんわりと沁みる様に融けていった。
フレンに声をかけようとすると、隣の彼はうとうとと微睡んでいた。ユーリは苦笑して、
「ほら」
ぽんぽんと自分の膝を叩いた。枕になってやるという意味だったのだが───
「…」
「………おまえ、何つー顔すんだよ」
フレンは深く眉間に皺を寄せた。が、眠気には勝てなかったらしく、素直に横になった。
「…硬い」
「しゃあねぇだろ。あんま文句言うとはっ倒すぞ」
文句を言うフレンに、そう言った。街にはフレンの言った通り、雪が降っていたが、風がないのであまり寒くない。
やがて静かな寝息が聞こえ始め、あどけない寝顔にユーリは苦笑する。
「あんま、頑張るなよ」
目覚めれば、また彼は帝国騎士の肩書きと騎士団を、その双肩に担わなければならない。そして、それを甘んじてフレンは背負うのだろう。けれど、せめて今だけは一時の安息を。そう願うのは、友としての友愛によるものだ。
「…ありがとう、ユーリ」
フレンが、ユーリに聞こえない程度の声で呟いた。それが寝言かどうかは、彼のみぞ知ることだ。

その一時間後───フレンの寝相が悪くて、ユーリが散々な目に遭ったというのは、また別の話。

(フレン騎士団長、こちらにいらしたんですか───って…?)
(静かにしろ。起きちまうだろ。あ、そうだ、おまえブランケット持ってこい。あ、あと枕もな。そろそろ足が痺れてきた)
(え…でも…)
(いいから、早くしろよ。フレンが風邪ひくだろ。騎士団長に風邪ひかせたら、おまえ、打ち首獄門だぜっ?)
(は、はいぃぃぃ!!)



▼二月の拍手文でした。pixivからのリサイクルとか、それどーなの。いろいろとおかしい点があるので修正しようと思ったのですが、心が折れて挫折しました…やっぱり昔の文をそのまま掲載しちゃいけないわ…今後気をつけます。 



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