あまりに美味しそうだったもので 





※キリ番リクエスト。h.k.様。ユリフレです。





 今日は久々に二人の休日だった。なので、フレンが久々に会おうと誘い、ユーリの提案で宿屋・帚星にて二人で食事をしていた。キッチンと食堂の一角を貸して欲しいというと、女将さんはあっさり了承してくれた。腕を振るったのは、もちろんユーリだ。フレンも何か手伝うと言ったのだが、宿屋の女将さんがうまくフレンを説得してくれたおかげで、惨劇は未然に防ぐことができた。彼をキッチンに立たせてしまうと、せっかくの休日が台無しになってしまう。ギルドに所属するユーリはともかく、フレンは栄えある帝国騎士団の騎士団長。休みなんてそう取れない。たまには幼馴染みと一緒の休日をと、計らってくれたヨーデルとエステルの善意は無駄にはできなかった。
「…別におまえに会わなくたって、オレは死にゃしねぇんだけどなぁ」
 食後のクレープを既に平らげてしまったユーリが言った。フレンの眉根が寄る。
「随分な言い種だな。僕だって、別に君に会わなくても困りはしない。だが、両殿下のお心遣いだ。ありがたく頂戴しなければ」
「相変わらず生真面目なこった」
 ユーリは丸めた包み紙を、ゴミ箱に放り投げた。綺麗な弧を描いたそれは、見事ゴミ箱の中に入る。やりぃと笑みを見せたユーリを、フレンが咎める様な目で睨んだ。
「入ったんだからいいだろ」
 手をひらひらと振りそう言うと、フレンは閉口した。ユーリもそっぽを向こうとするが、フレンが頬張っているクレープに思わず目が行く。自分は悩んだ末にチョコバナナにしたのだが、フレンのクレープはベリーソースがかかったイチゴクレープだ。やはりあちらにすれば良かっただろうか。
「…そんな風に見ないでくれ。子供じゃないんだから………」
「………」
「あげないからね。あんまり糖分ばかりとっていると、体を壊すぞ」
 ツンと突き放すフレン。だが、ユーリの視線は剥がれそうにない。フレンも、もう徹底的に無視を決め込むことにした。
 だが、
「あ」
 小さくユーリが声をあげた。フレンはきょとんとする。その頬に、生クリームがついていた。唇のすぐ隣。だが本人は気付かず、首を傾げてユーリを見ている。
「どうかした…」
 言いかけた言葉は途中で途切れた。何故なら、眼前にユーリが迫ってきていたから。そして唇の付け根辺りに、にゅるりという感触。驚いて見上げると、テーブルの上に手を置いて前屈みになったユーリは、ニヤリと笑って舌なめずりをした。
「なっ…これは………ユーリ!!!」
 強く名前を呼ぶが、ユーリは何事もなかった様に椅子に座り直す。その様子にますます頭に血がのぼり、もう一度怒鳴った。
「どういうつもりだ!?バカじゃないのか!?」
「なんだよ。頬に生クリームついてたから、とってやったんじゃねーか」
「それくらい指摘してくれれば自分でとれるし、何も舐めとることなんかないだろう!」
 立ち上がって憤慨するフレンの顔は、周知やら怒りやらで真っ赤に染まっている。しかし、やはりユーリは動じることなく、軽く笑って茶化した。
「そんな怒んなよ。いいだろ、キスくらい。生娘じゃあるまいし。ガキの頃もしたじゃねぇか」
「それとこれとは話が別だ!!」
 ダン、とフレンが両手でテーブルを叩いたため、水の入ったグラスが揺れた。零れた雫がテーブルに小指の先程度の水溜まりを作る。ユーリはぼんやりとそれを見た。フレンの語気は強い。
「キスくらいって何だ!?くらいって。君がそんな軽い奴だとは思わなかった!」
 フレンの軽蔑がこもった言葉。大袈裟だと思いながらも、これ以上は面倒くさいことになりそうなので、一応の謝罪を口にした。
「わかったよ、オレが悪かった。次からは気をつけます」
「…」
 疑う様な視線が向けられる。本当に反省したのかと言いたげだ。
「詫びに、何でも好きなもの作るから。オレも食いたりねぇし。な?」
「…」
 僅かに、フレンの目の色が変わった。しばし躊躇いはしたものの、好物の誘惑には勝てず、いいよと頷いた。
「肉料理なら許してやる」
「わかりましたっと」
 ユーリは笑って立ち上がり、厨房へ立った。席に座ったフレンがは、やや落ち着かない様子だ。
 ユーリはそれを一瞥し、フライパンを手にとる。簡単な炒めものを作る気でいた。
 ユーリが、もし次があれば舌を入れてやろうだなんて思っていることは、料理の完成を大人しく待っているフレンには知る由もない。





▼h.k.様のキリリクです。ユリフレということで、好きに書かせていただきました。リクエストから3か月も経ってしまい、申し訳ないです…すみません。全力でお詫びさせていただきます。
糖度低めですが、ユリフレになってますよね…?こういう時に作家の趣味が出る…。
拙い文ですが、受け取ってくださると幸いです。リクエストありがとうございました!

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