HERO 





※ユリフレで現パロ。不良ユーリと、にょフレン。いわゆる女体化でいいかな。









俺が呼ばれて駆けつけると、そこは死屍累々の山だった。ざっと30人くらいの人間が積みあがって、山を形成している。その頂点に座り、携帯電話をいじっているのは、俺の甥っ子のユーリ。俺を呼んだ張本人だ。
「おいおい、青年。これはやり過ぎじゃない?」
「…因果応報って言葉、知ってるよな?」
甥は携帯電話から顔も上げず、平坦な声で言った。俺は肩を竦める。
「知ってるけども…何もこんなピラミッド作ることはないでしょーよ」
「コイツらが悪ぃんだよ。フレンに手ぇ出そうとすっから」
「…また?」
俺は呆れ顔になった。この甥───ユーリが、暴力沙汰を起こすのは珍しくない。ただ、そのほとんどの動機に、奴の幼馴染みであるフレンが関わっている。
「今度は何よ?またフレンちゃんで、えっちな妄想してたりしたの?」
「違ぇよ。…コイツら、フレンがムカつくからって、襲おうとしてたんだよ」
「あらま」
俺は少しだけ眉を寄せた。これはまた物騒な言葉が出てきたもんだ。
「だから、ブチのめしてやったんだけど…途中から仲間がぞろぞろやって来て、気が付いたらこんな数になっちまってた」
「いや…こんな数の人間相手に、よく勝ったわね………」
俺は感心しながら、死屍累々の山を見る。半分くらいは気絶していたが、中には俺を睨み返す奴もいた。
「ところで、青年、何やってんの?おまえさんがケータイいじりっぱなしって、珍しいわね」
「俺のじゃねぇよ。コイツの」
ユーリは、自分の尻に敷いている男の頭を掴んだ。スキンヘッドの目付きの悪い男の頭だ。
「喧嘩の途中に、何人か逃げられちまってな。後々、フレンに何するかわかんねぇから、リーダー格らしいコイツのケータイ調べてんの」
「へぇ…青年にしては、周到ね」
俺は苦笑した。どうやらユーリはフレン関係だと、労力を惜しまないらしい。
「…ちっ、ついてねぇ…何だってんだ………あのまな板女───」
「黙れ」
「がっ…」
ユーリは男の頭を掴み、真下に折り重なっている男の頭にぶつけた。すると男は白目を向いて、泡を吹いた。俺は手を合わせて、南無南無と唱える。
「触ってもねぇ癖に、まな板なんて、言うんじゃねぇ」
「…そういう青年はあるの?」
「当たり前だ」
「どうだった?」
「………」
俺が訊くと、ユーリは黙り込んだ。ケータイを見つめたまま、何も言わない。
「やっぱ、つるぺた?」
「ない訳じゃ───…って、何でおっさんに教えなきゃいけねぇんだ!!」
ユーリは顔を上げて俺を睨んだが、俺は知らんぷりをする。この反応だと、発育は悪くない様だ。
「B…いや、Cか?」
「………おっさんも、ここに積まれてぇか?」
凄い形相でユーリが睨んできた。俺は両手を上げて、首を振る。
「おー、おっかないあんちゃんだねぇ…くわばらくわばら」
「わかりゃいい」
ユーリは再びケータイに視線を戻した。そして、俺はユーリが大事そうに何か抱えているのに気付く。
「あれ?それ…時計?」
俺は首を傾げた。どうやら目覚まし時計らしい。ユーリは携帯電話から目を離し、ああと頷いた。
「下着のサイズが合ってないって言ったら、投げられた。流石フレンだな、顔面にモロに食らってマジ痛かった。コントロール抜群」
「…御愁傷様」
俺は気の毒に思い、そう言った。ユーリには、昔から乙女心を鑑みる能力がない。
「それにしても、報われないねぇ…」
「あん?」
「好きなコのために頑張っても、気付いてくれない。切ないじゃないの」
「………」
ユーリは携帯電話を閉じた。どうやら仲間の確認が済んだらしい。
「………そういうんじゃねぇよ。俺が許せねぇから、勝手にやってるだけ。…フレンなら、自分で何とかするだろうしな」
「いやいや、ユーリくん。女の子はたおやかなのよ?時には助けてもらいたくもなるさ」
「………」
ユーリは黙り込んで、しばらくしてから山から跳び降りた。その際に、ふぐと呻く声が聞こえるが、知ったことではない。俺に背を向け、小さく呟く。
「…サンキュ」
「いえいえ」
俺は苦笑する。本当に報われない恋だ。
ユーリは、へばっている手近な不良の頭を掴み、一発殴る。ガッと肉を打つ音が響く。
「いいか。今度、フレンに手ぇ出そうとしたら、こんなんで済むと思うなよ。バックにヤクザが居ても、政治家が居ても、ブッ潰すかんな。こんな真似、二度とすんな。他の奴らにもそう伝えろ」
「ハ、ハイィ…!!」
男は縮み上がった声を出す。それを聞いて満足したのか、ユーリが微笑んだ。もともと中性的な顔立ちのユーリの笑みは、そこいらの美女も裸足で逃げ出すぐらい綺麗だ。しかしそれを見て、俺は背中に寒気を感じずにはいられない。
次の瞬間、ユーリは不良のケータイを、真っ二つにへし折った。唖然とする不良達。パクパクと酸素が足りなくなった金魚の様に、口を動かしている。
「よし。…じゃあ、帰んぞ」
「…へい」
ユーリは変わらずの笑顔で言った。俺はそれ以上何も言わず、近くにとめてあった車に乗り込む。ユーリは助手席で疲れきった顔をしていた。
「あー、ダリィ…」
「お疲れさん」
誰も労ってくれないユーリに、俺は言葉をかけた。
そして、この報われない恋が、どうか叶う様にと、柄にもなく祈ってしまった。哀れなユーリのためにも、毎回冷や冷やさせられる俺のためにも。



▼にょフレにはあまり興味なかったんですが、ものは試しと書いてみた代物。 



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