天藍に想う 





どんなに長い時間を共に過ごしたって、密度が伴わなければ、意味がない。彼らが共に過ごした時間は、長くて穏やかなものだった。ほのぼのとした友愛は、居心地はいいけれど、刺激や鮮烈さには欠ける。
旅に出る前までのトウヤは、幸せそうに見えて、どこか物足りなそうな顔をしていた。何かに焦がれる様な瞳で、ここではないどこかを見つめていた。
薄々、感づいてはいた。トウヤが、ここにはない何かを求めていることは。
でも、ずっと一緒にいられると信じていた。旅に出ても、旅が終わっても、自分たちは笑っていられるのだと。
事実、そうだった。けれど、厳密に言えば違う。トウヤの笑い方が変わっていた。ほんの少し、寂しそうに笑うことに、チェレンは気付いていた。そして、原因にも。
全部かっさらっていったのだ、あのNという青年が。
自分たちの周りにいないタイプの人間だった。否、あんな人間など、そうはいないだろう。奇抜な行動と、突飛な言動に、チェレンはあまり彼を好ましく思わなかった。
しかし、トウヤは惹かれた。強烈に、魅せられてしまった。彼だけが、トウヤが抱えていた物足りなさを、満たしてくれたのだろう。
この短い旅の中で、トウヤは変わってしまった。近くにいながら、手が届かない。その変化が、いいことなのかどうかは、チェレンにはよくわからない。多分、どちらの面もあると思う。
チェレンは空を見上げた。トウヤも、昔から空を見上げることが好きだった。特に最近はよくぼうっと、空を仰いでいる。きっとイッシュから去ってしまった彼を想っているに違いない。
チェレンも、いつかの彼に倣って空を仰いだ。この同じ空の下、旅をしているであろうトウヤのこと、そして彼が魅せられたかの人のことを想った。






▼習作。これでもトウチェと言い張ってみる。N←トウヤ←チェレンみたいな構図が好きです。報われないけど。



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