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※元拍手文。Nと誰か。





この世界にいる悪党の数を数えてみようか。何、ボクの知る限りの悪党だから、大した数じゃない。

まずひとつめは、ポケモンマフィア・ロケット団。これは君も知ってるだろう?
彼らは、イッシュから海を越えた先にある、カントーやジョウトを拠点にしていた。“金銭を得るのためなら何でもやる”という、極めてシンプルな理念の下に悪事を働く彼らは、以前まで悪の組織の代名詞だったが、数年前とある少年に解散させられてしまったらしい。

ふたつめとみっつめは、カントーから南西に位置するホウエン地方で、覇権を争っていた。マグマ団とアクア団。聞いたことあるかな?マグマ団は、“陸を増やして人とポケモンの生活を豊かにすること”───アクア団は、“海を増やして人とポケモンの生活を潤すこと”を目指し、活動していた。
とても悪党だとは思えないって?…見解の相違だな。ボクは、彼らもまた、悪党と呼んで差し障りない様に思うよ。人間が世界の在り方を変えようだなんて、はなはだおこがましいことじゃないか。
世界は既に完成された状態で存在している。自然科学を勉強すれば、そんなことすぐにわかるよ。
この組織も、とあるトレーナーに野望を阻止されてしまったらしいね。

ホウエンから遥か北の、シンオウで活動していたギンガ団。これもまた悪だ。この団体は、平たく言えば世界征服を企んでいた。私利私欲を追求する姿勢はロケット団と似ているが、金銭ではなく世界そのものを欲したことが、ロケット団と違う点だ。どちらも悪には違いないけどね。

あとは、ポケモンを密輸入するハンター等も、忌むべき悪党の中に入るだろうけど、今上げた団体に比べれば、規模は小さいね。

では、悪とは何か。
簡単な話だ。人間の心そのものだ。
もちろん、全員が悪だとは言わない。君みたいな心根の優しい人間も、いることはいるだろう。
だが、全ての人間の心には、悪が潜んでいる。年齢も性別も、人種も宗教も関係なく、全ての人間の心に悪はあるんだ。
そんなことはない?…君とはよく意見が食い違うな。なら、この話を聞いても、否定できるかい?

ある森に、ゼブライカが住んでいた。そのゼブライカは、少しだけ気性が荒かったが、別段悪事を働くでもなく、幸せに暮らしていた。
しかし、ある日、ゼブライカの住む森に、人間がやってきた。人間はゼブライカの住んでいた森を焼き払い、そこで大規模な農業を始めた。
ゼブライカ達は、住処と食料を失った。だから、食料を得るために、人里へと降りる様になった。
もちろん、人間達はゼブライカを追い立てた。最初は自慢の駿足で逃げ切れていたものの、段々と人間達は本気になってきていた。
遂には、人間は銃を使って、威嚇射撃をする様になった。殺されそうになり、パニックを起こしたゼブライカは、その人間を襲った。幸い、襲われた人間は怪我で済んだものの、人間達はゼブライカを獰猛だと見なし、ゼブライカに発砲したんだ。

人間が、ポケモンを殺すと、それはあくまでスポーツとされるけど、ポケモンが人間を殺すと、獰猛だと見なされる。理不尽な話じゃないか?もしゼブライカが人間だったら…?

…話に出たゼブライカは、ボクのトモダチだよ。昔、彼から聞いた話だ。脚に弾を受けつつも逃げ切った彼を、幼かった頃のボクが偶然見つけて、保護した。命に別状はなかったけど、怪我のせいで一生歩くことができなかったんだ。…数年前に、死んでしまったよ。

この現実を、ニュースで耳にしても、何も感じない人間がゴロゴロいる。だから、ボクは人間を心から憎むんだ。

…それでも、君はポケモンと人間が共に歩んでいく未来を信じるのか。君とは、つくづく見解が合わないらしい。

ボクの大切なトモダチを、彼の様な目には遭わせはしない。絶妙に。
そのためにボクは戦うんだ。全ての人間から、解放するために。ボクがトモダチを守ってみせる。

君とは最後まで価値観が合わない様だな。残念だが、仕方ない。でも、いずれ君も認めざるを得なくなるよ。白と黒、ポケモンと人間が分かたれた世界を…。
何が悪で、何が善なのか…よく考えるといい。





▼元拍手文でした。N様と誰か。誰なのかは特に決まってないです。こういう一人称の話好きなんですよ。すっごく難しいけど。
テーマはジョージ・バーナード・ショーの「虎が人間を殺せばそれは獰猛だとされ、人間が虎を狩ればそれはスポーツだとされる」という名言より。厨二?言うな、わかっている…。



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