ちょっとオトナのバレンタイン


二十歳を過ぎてからのバレンタインデーは、中にとろりとした洋酒の入ったチョコレート。
余程気に入ったのか、青峰にリクエストされてからは毎年コレだった。

「お酒の入ったチョコレート、好きだね」
個装を開けて、口に含むととろりと溢れる苦味のある洋酒を口内で転がす青峰は首を横に振った。

「好きじゃないの?」
「このまま食うのは、別に好きじゃねーんだよ」
青峰の唇が薄いさつきの唇を覆った。甘いのとほんのりとした苦味がさつきの口内に広がる。目を細めて、しっかり味わった。

「ッ、こうやって、味わいながら、オマエごと食うのが好きなんだよ」

「ばか、えっち」

名残惜しそうに唇を離して、青峰の唇を指でなぞる。物足りない、と。
チョコレートと洋酒の匂いと、青峰の熱がもっと欲しい。さつきはチョコレートを口内に招いた。

キスして、と、視線で訴える。
どうしようか?視線で返した。

苦手な洋酒も青峰の唾液と混じり合えばいくらかマシになる。それなのに、勿体ぶっているので唇を尖らせた。

「も、キスしてよ」
飲み込んだ洋酒が喉に引っかかって、気持ち悪い。酒に弱いさつきは、少量で酔ってしまった。
頭がふわっとして、身体の奥がじんわりと熱くてどこか気持ち良い。
青峰の首に回した腕に力を込めて、コツンと額を重ねた。

完全におねだりモードに入った。

「カラダ、熱くて変な感じ」
とろんとした表情で、上擦る声は非常に色っぽい。
「ハダカになって、スッキリしたいのか?」
ストレートな物言いに、照れてる暇は無かった。

何故、毎年のバレンタインデーに洋酒入りのチョコレートを所望するのかを知っていた。

「シたい。ねぇ、今日の下着、すっごいえっちなの。大ちゃん好みだよ。いっぱい汚していいからね」

特別に乱れる自分が見たいからだろう。
ご要望のままに、卑猥な言葉で誘う。

下着も気合いの入ったセクシーなものを。
丸ごと食べてもらうために。

一際、いやらしい視線に、さつきの背は期待にゾクゾクと震えた。
抱きついて甘えると、青峰の唇が近づいてくる。

欲しかった刺激が漸くやってくる。

来年のバレンタインデーは、どうしよう。
もう少し、強めのお酒にしよう。
下着も、もっとえっちなものにしようかな。

僅かに残る理性を繋ぎ合わせて、ぼんやりと思った。

END

2019.03.19




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