知らなかったんだ、こんなにも

……愛して、いたなんて











「こんちはーっス!」

大きい挨拶と明るい笑顔で体育館に入る。
今日はテスト明けだ。
それはつまり、久々の部活ということ。
テスト勉強中に息抜きにバスケしてはいたがそれでも嬉しいことこの上ない。

「………」

すると既に来ていた緑間っち、青峰っち、黒子っちから冷たい視線を送られた。

「…こんにちは、黄瀬君」
「黄瀬うるさい」
「少しは黙ったらどうなのだよ」

3人それぞれの答えが返ってくる。
黒子っち以外、みんな酷く心に刺さるが。

「ヒドッ!!久しぶりの部活だからテンション高いんスよ!!」

緑間っちは大きなため息をつくとスリーポイントを打ち始める。

「そういえば赤司君と紫原君、遅いですね」
「ああ、2人なら掃除してたっスよ」

黒子っちに向かって言うとそうですか、と返ってくる。
ああ、黒子っち可愛い。

「…あ」
「…?今度は何なのだよ」

ふと、思い出して声を漏らす。
「女の子から貰ったお菓子、教室に忘れて来」
「黄瀬死ね」
「同感なのだよ」
「…………」酷い。特に青峰っち。
死ね、って……。

「〜っ、取ってくるっス!!」「待てよ黄瀬」

少し、ほんの少しだけ悲しくなって半ば自棄になって言う。
だって、まさか、あんな言葉を貰うと思ってなかったから。

「俺も行く」













「…あ、あった!」

がさ、と机に掛けていた袋を掴む。
チョコレートやクッキーが綺麗に包装されているそれは、量がかなりのものだった。

…しかし、まさか青峰っちが一緒に来るとは思ってなかった。
さっきまでうるさいだの死ねだの言ってたくせに、どういう風の吹き回しなのか。

「食べきれんのかよ」

悶々と考えていると青峰っちが尋ねてきた。

「もちろん。俺のためにくれたんスよ。
 ちゃんと全部食うっス」
「…ふーん」

青峰っちは面倒くさそうに相槌を打ち、壁によしかかる。

「ついて来てくれてありがとうっス。もう戻ー…っ!?」

ぐい、と腕を掴まれそのまま唇と唇が重なる。
苦しくなって唇を少し開けたら、待ってたかのように青峰っちの舌が口内に侵入してきた。

「…っ、は…っ」

苦しい、苦しい。
呼吸を全て持って行かれる。

力が入らなくなり、持っていたお菓子の袋を落とす。
腰が抜けそうだ。

「…っん、あおみ、ね…っち…」

かく、と腰が抜けるのはそのあとすぐ。
そうしたら青峰っちはやっと唇を離してくれて、肩で息をする。

青峰っちの意図が分からない。
なんで、いきなりこんな、

ー…狡い、キス。

「…っなん、で…」
「あ?」

元々、憧れだった。
バスケの面白さ、楽しさ。色々なことを教えくれたのは青峰っちだ。

それが、どういう訳が恋に変わって、好きで、我慢できなくて告白して。

リズムよく進んでいったからまだ実感がない。
青峰っちが俺のこと好きなのか。

「なんで、いきなり、キス…」
「…そんなの、決まってんだろ」

青峰っちは俺の方を見てにやりと笑う。

「その顔、そそるからだよ」

言われた瞬間顔が赤くなるのを感じ瞬時に手で覆う。

「なんだよ、隠すなよ」
「い、嫌っス。恥ずかしいス!!」
「お前は乙女か…」

行くぞ、とぶっきらぼうに言われた顔を隠したまま歩こうと立ち上がった瞬間。

だん、と壁に追いやられる。

俺がまず一番に考えたのは背中が痛いとかそういうんじゃなくて、驚いて隠すのを止めてしまった顔だ。「…なんて、言うと思ったか?」

青峰っちがかっこよくてかっこよくて、俺はまた顔が赤くなった気がする。

ぼーっとしていたら首筋に舌這わそうとしていた青峰っちを止めるのを忘れていた。

「ちょ、青峰っち!部活…」
「赤司にばれなきゃいいだろ」
「でも…!」
「…ほう、誰にばれなきゃいいって?」

俺と青峰っち以外の人の声が聞こえてバッと振り返ると。

「黄瀬、青峰。今日のメニュー2倍な」
「わー青ちんだいたーん」

恐らく一番見られたくない人物達がいた。

「ななな…っ」
「…チッ」

俺は何がなんだか状況が整理出来ない。
青峰っちは舌打ちをしている。
でもわかるのは誰か来なきゃ俺の貞操が危うかった、ということ。

「ほら、今なら2倍だけで許すから早く部活に行け。青峰、黄瀬から退け」
「……」

とりあえずやっと青峰っちが退いてくれて安心。
でも、そのあとすぐ手を握られ走り出す。

「黄瀬、行くぞ」

そう言われて手から伝わる青峰っちの温もりと照れた顔が可愛くて、嬉しくなって笑った。






な が い\(^p^)/

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