今日は、特別な日。他の人からしてみればなんてことないただの12月20日なんだけれど、彼と、自分にしてみれば他のどの日より特別で大切な日。
12月20日は、
きみがうまれた日。





カチ、カチ、コチ、コチ。
今は珍しいアナログ時計の秒針が音を立て、時間が経つのを教えてくれる。進むリズムはいつもと何も変わらないのに、妙に早く感じたり遅く聞こえたりするのは、おそらく自分の気持ちが浮き足立っているせい。あと数分経てば、君が生まれた日になる。自分は携帯を握りしめて、刻一刻と迫る時間を待っている。
『今日は電話をかけるので待ってて下さい』
先程、部活終了時にわざわざ赤司君を呼び止めてそれだけ伝えた。それだけ伝えるのが精一杯だった。赤司は驚いたように目を丸くして、でもそのあとすぐにいつものように笑みを浮かべて分かった、と言った。
そのきはなんだか見透かされているというか、馬鹿にされたみたいというか、色々な思いが入り混じってよく分からなかったけどただ恥ずかしくて顔が赤くなった。
君の誕生日まで、あと残り一分。携帯のアドレス帳から赤司君の電話番号を出して、待機する。大好きな君の誕生日は、自分が一番最初に祝いたい。
かちり。秒針が12時をさす。携帯の日付は12月19日から12月20日に変わる。君の誕生日がやってきた。発信ボタンを押す。どくん、どくんと心臓が煩いくらいに高鳴っている。電話をかけるだけでこんなに緊張したのはこれが初めてかもしれない。

「もしもし」

何回かコールをして君が出た。聞き慣れた君の声がなんだかいつもと違う気がして、顔に熱が集中する。まるで、初めて電話をかけたときのようだ。

「あ、赤司君、ええと、あのっ」

言葉が詰まる。声は震えるし裏返る。ああ、言いたい、言わなければならない言葉があるのに。
電話越しに、君がくすくすと笑う声が聞こえた。恥ずかしい。ただでさえ赤い顔が更に熱を増す。

「ふ、そんなに慌てなくていいのに」
「っ、だって」

君の誕生日を一番に祝いたいんです。
そう言えば携帯からは何も聞こえなくなる。沈黙が走り、また恥ずかしくなる。アナログ時計の秒針は聞こえなくて、自分の心臓の音しか聞こえない。いつもより倍のペースで心臓がなる。

「…その気持ちだけで俺は十分ありがた」
「いえっ、ボクが言いたいんです!」

赤司君が言い終わる前にそう言うと赤司君が笑った。

「…黒子は、俺より今日が来るのを楽しみにしてくれたんだな」

ありがとう。
そう言われて胸の奥がほわ、と温かくなる。君はどうして、自分の心を温めるのが上手なのだろう。でも違う。いつも与えてばっかりもらっている自分でも、今日は与える側になる。今日は、君が生まれた日なのだから。

「赤司君、」
「うん」
「誕生日、おめでとうございます」

大好きです。小さな声でそう言った。何を言えばいいのか、全くわからなくてとりあえず伝えたいことだけを伝えた。それでも赤司君は嬉しそうに声を弾ませてありがとう、俺もだよ、と言ってくれた。ああ、また、胸の奥が温かい。

「明日学校でプレゼントを渡しますね」
「ありがとう。とても嬉しいよ」
「…それはよかったです」

とくん、とくん。
心臓が、心地よいリズムを奏でる。聞こえなかった秒針も今は聞こえて、ゆっくりと時間が経つのを教えてくれる。顔の赤みも少しずつ消えてきた。

「ところで黒子」
「はい」
「言いたいことは、それだけか?」

どくん。
心地よいリズムを奏でていた心臓がまた不規則に鳴り始める。どうして赤司君には自分の考えていることが全てお見通しなのだろう。

「言いたいことがあるなら今言っておけ」
「…っ」
「ほら、」「……っ生まれてきてくれて、ありがとう」



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赤司君happybirthday!
時間無いし体調悪かったんでこんなのしかできなかったけど許しておくれ
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