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◎及川と黒尾※hq (2014/09/19)

「今日は俺が上だ!」

なんでもないある日のことだった。
黒尾の家に遊びに来ていた及川は、夕食を食べ風呂に入り、2人で他愛のない話をしていたのだ。
ふとそういうような雰囲気になって、口づけを交わしながらいつものように黒尾を押し倒そうとした及川は、そう言って及川を押し倒した黒尾に驚きを隠せないでいた。

「…え〜と………クロ、ちゃん?」
「いつも組み敷きやがって……俺も男だし、お前のこと抱いてみたいんだけど?」

男らしく妖艶な顔で笑った黒尾は、もういつも及川に押し倒されて好き勝手に弄られ真っ赤な顔で目を潤ませていることなんて微塵も感じさせないほど雄らしい顔をしていた。
確かに、及川が黒尾を抱きたいように、黒尾が自分を抱きたい気持ちも分かる、と及川は思った。
だが、ここで押されるわけにはいかない。

及川は黒尾の真っ赤になって自分に全てを委ねてくれているあの顔が大好きなのだ。
普段の男らしい黒尾もいいけれど、自分といるときくらいは他の誰も見たことがないような黒尾の姿が見たいのに、と及川は内心焦っていた。
どうすればいいのか。
及川がそう悩んでいる間にも、黒尾は今にも自分を襲ってきそうな勢いだ。焦る脳内では、これといったいい案も浮かぶはずがない。

そうこうしているうちに、痺れを切らした黒尾が、及川の口を塞いだ。

「ん!?ふ、んん………」
「ん、ん………っ」

黒尾の舌遣いや、するすると及川の腰を撫でる手つきに驚きながら、及川はされるがままだった。
そこで、及川はあることを思い出す。
舌遣いや腰を撫でる手つきが、いつも自分が黒尾にしているものと少し似ていたのだ。
黒尾と恋愛遍歴の話をしたことはないけれど、少なくとも男は自分が初めてのはずだ。
そしてこれは及川の推測だが、ふとしたとき、例えばデートの時になんの深い意味もなく少しからかうくらいの気持ちで黒尾にぼそりと俗に言う愛の言葉なんてものを言ったとき、黒尾は真っ赤な顔をしてうるせぇと足を軽く蹴ってきたのだ。

以上のことから考えると、もしかしたら黒尾はあまり恋愛経験がないのかもしれない。



黒尾からのキスを受けながらそんな考えに落ち着いた及川は、起死回生のチャンスとして勢いよく黒尾の襟首を掴んで、より深く口づけする。

「っは………っ、おい、か……ん、んんっ」

及川は黒尾が好きだ。
本当は、別に黒尾に抱かれてしまっても自分は不快には思わないんだろう、と及川は考えた。
及川は黒尾が好きだから、黒尾に何をされても結局は「好きだから」で全部片付いてしまうと考えた。

でも、それでも、どうして自分がこんなに足掻いているのか。
それは、おそらく。

「っんん………ふ、ん…っ、や、も………んっ、ん………」

しばらくの間口づけをしていた。
そしてたまに、及川は黒尾の尻や腰を絶妙な力加減で撫でる。
そうすると及川の上に乗った黒尾が、キスの間に弱音を吐き始めた。
その顔はもうすでにいつものように赤くなっていて、及川を押し倒す力も最初よりはずっと弱いものになっている。
及川は今だ、と腕に力を入れて黒尾をベットに押し倒す。
キスの雨はやっと終わり、黒尾は息を切らし、真っ赤な顔で目を潤ませながらぼんやりとしていた。
そう、この顔だ。
及川は、黒尾のこの顔が好きで好きでたまらないのだ。

「………キスでこーんなになって、腰撫でられて期待して揺らしちゃうのに、クロちゃん俺のこと抱こうとしてたんだ…?」
「……っ……や、みみ………っ」

耳元でいつもより低めの声でそう言った及川は、黒尾のTシャツをゆっくり脱がしながら、身体中にキスを落としていく。

「………クロちゃん、ね?」
「……っ、」

黒尾は涙目で及川を睨んだけれど、力のないそれは及川を興奮させる材料にしかならない。
及川はもう一度口づけながら、黒尾の返事を待つ。
おそらくもう、時間の問題だけれど。


「………っも、すきにしろよ………っ」


キスだけに耐えきれなくなったのか、黒尾は力なく及川の服を掴んで目をぎゅっと瞑ってそう言った。
及川は黒尾のその言動にまた興奮して、またキスを落とした。

その後からは、2人だけの秘密の時間。








俺が足掻いた理由なんて、きっと黒尾が自分の愛撫で訳が分からなくなっているところが見たいだけなのかもしれない、と及川は思った。





∴理不尽な微熱を分けあう
title by thron


18歳になった紫月ちゃんに黒及黒のちゅっちゅ話を。
誕生日おめでとう!


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