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◎青峰と黄瀬 (2014/03/25)




※ナチュラルに恋人してます
※誰も報われないです









「ごめ、んなさ………っ」

涙声で言った黄瀬は、顔を覆って青峰の前にしゃがみこんでいた。
思えば、今日姿を見かけた時から様子はおかしかった。自慢の綺麗な顔には疲れが滲んでいて、目はまるで泣き腫らしたような。
もっと言えば、会いたいと連絡をもらった時もおかしかった。か細く、今にも消えてしまいそうな声だった。

「ごめん……っ!」

子供が消えた夜の公園に青峰たちは居た。青峰は少し錆びついたブランコに座ってぼんやりと黄瀬を眺める。
近くに家や店はなく、こんなことをしていても人が通りかかることはないだろう。
黄瀬は先程まで青峰の左隣のブランコに座っていたけれど、立ち上がり青峰の前に来て、でもそこでがくんとしゃがみこんで泣いている。
ごめんなさい、を繰り返しながら。

何を言われるのか、こんなにもったいつけられたら分かってしまう、と青峰は黄瀬の泣き声を聞きながら考えた。
それでもこいつは青峰にそう分からせても、未だ最後の一言を言えずにいるのだ。あぁ、狡い。相変わらず狡くて、弱い奴。

「あお、みねっち、俺……っ」

嗚咽しながら目を擦りながら、黄瀬は必死に口を動かしているけれど、どれもちゃんとした言葉にならないまま、零れ落ちてゆく。
ぎしぎしと軋んでいく心を無視して、黄瀬の髪に触れた。
びくり、と体を強張らせた黄瀬は顔を覆っていた手をだらんと下に下ろして、涙でぐちゃぐちゃにした顔を青峰に向けた。

「ふっ、きったねぇ顔」

それモデルに言っちゃうんスか、とか、ひどいっス青峰っち、といった悪態は返って来なかった。
それが余計に己の胸を痛めつけ、痛みを振り払って青峰は黄瀬の涙を親指で拭う。
それを見た黄瀬はまた涙を流した。
そうして沈黙が流れる。

心当たりはあった。
お互いの距離が少しずつ遠くなっていくのを青峰も黄瀬も、心のどこかで気づいていた。
そして、少なくとも青峰は、それを気づいていたが、敢えて何もせずにいた。
それを何故かと問われれば、きっと自分を正当化しようとする言葉しか出て来ない。
青峰は故意に何もしなかった。でも、そうしてしまったことを果てしなく後悔していた。

「黄瀬」
「……」
「黄瀬」
「…………っ」
「言うぞ」
「や、やだ……っ」

青峰の言葉に黄瀬は必死に首を振り、青峰のジーンズを僅かに握って止めた。

「ア、アンタにそんなことさせられない……っ、そんなことしたら、おれ」
「それでいいんだよ」

拭っても拭っても溢れる涙を、黄瀬はもう止めようとしなかった。
黄瀬の涙はそのままぽたりぽたりと地面に落ちる。

「それでいい。俺に合わせる顔なんて、なくせ。それで俺のことも忘れろ。でも、俺にこうしたことは、絶対忘れんな」

青峰はジーンズを掴んでいた黄瀬の手を握り、そしてそのまま優しく離す。
嫌だ。そんなことをしたら、俺は、アンタは。
黄瀬は必死に青峰を止めようとするが、青峰は全く動じなかった。

そしてついに、黄瀬が恐れていた言葉を告げる。

「黄瀬、俺と別れろ」

ああ、どうしてこうなってしまったのだろう。
どうして止めることができなかったのだろう。
世界が色を、音を無くしていくような感覚がする。
でも、俺、最低だけど。アンタに言ってもらえて少しだけホッとしてる。

最低だけど、本当最低だけど、好きでごめん。








∴魔法はとうの昔に解かれていたのです


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