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◎赤司と黒子 (2012/08/28)







「赤司君知ってますか」

それは部活の休憩中、黒子がいきなり赤司に訊ねたことから始まった。

「手の冷たい人は心が温かい人なんだそうです」



水槽の魚が死にたがる



「…は?」

いきなり何を言い出すんだ、と言わんばかりの顔で黒子を見る赤司。そんな赤司にいつもと変わらない表情で赤司を見る黒子。

「だからですね、ちょっとつきあって下さい」

どこに、と聞く前に赤司は黒子に腕を引っ張られていた。









「…と、いう訳なので触らせて下さい」
「どういう訳なのだよ!」

連れられて向かったのは緑間の元。黒子は先程赤司に言ったことと似たようなことを緑間に伝え現在に至る。

「別に触らせるのは良いがどうしてこのタイミングなのだよ」
「いえ、ちょっと知りたくなったものですから」

ついていけない、という風に溜息をついた緑間。赤司は心の中で緑間に同情していると緑間と目が合った。

「赤司からも何か言ってくれ」
「…まあ…手くらい良いんじゃないか?」

そういうことではないのだよ、と言われて赤司はそうかと返す。仕方ない、そういった様子で緑間は黒子に片手を出す。黒子はありがとうございます、と言いぎゅ、と両手で緑間の手を握った。

「…………」
「…………」
「…………」

数秒の沈黙が続いた後、黒子は綺麗にお辞儀をし緑間に言った。

「ありがとうございました」
「で、なんなのだよ!?」

このようなやり取りをこの後紫原、青峰、黄瀬と続けていきそれにつき合わされた赤司は精神的に疲れていた。

「…で、何か収穫はあったのかい」
「いえ…これと言った確証は得られませんでした」

黒子のそれを聞いて赤司はまた精神的疲労が心に溜まる。ご迷惑おかけしました、と言う黒子に訊ねる。

「どうして急にそんなこと思いついたんだ?」
「ああ、本当に出来心なんですよ。たまたまクラスの女子が話していたのでちょっと気になって」

自分の手が温かったものですから、と自分の手のひらを見て言う黒子。確かにその話からいくと手の温かい黒子は心が冷たいということになる。

「迷信だと分かっていますよ、でもやはり気になって。心が冷たいってことはみんなと同じ瞬間に同じ気持ちを分かち合えないということですよね?自分もそうなのかと少し不安になりまして」

少し俯いて言う黒子の表情は見えない。しかしすぐに黒子は振り返って赤司に言った。

「赤司君、手を触らせて下さい」
「…分かった」

少し遅れて言うと赤司はす、と黒子に手を出す。黒子は何も言わずにその手を掴み、ぎゅ、と強く握る。

「!」
「冷たいだろう、」

テツヤに話しかけられる前手、洗ってきたからね、なんて言う赤司を吃驚した表情で見つめる黒子。

「僕だっていつもは手は温かいよ。テツヤ、何も心配することはないよ。君は冷たくなんかないし、むしろ君は熱いよ。その表情に隠されている熱い情熱はすごいと僕はいつも思うよ。その情熱に触れてみたいともね」

ぺらぺらと饒舌に話す赤司を未だ驚いた表情で見る黒子。そんな黒子を見て赤司はふ、と微笑む。

「迷信だ、テツヤ。大丈夫だから」

先程触れた黒子の手を赤司は握る。その手は少し冷たかったが、ほんのりと温かさも感じられた。
テツヤ、大丈夫だから、と何度も繰り返していれば黒子はいつのまにか赤司の手を握り返して耳まで真っ赤にした顔でこう言った。

「赤司君はいつもボクが欲しい言葉をくれるんですね」




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最近短編と小話の境目が分からない蓮ですどうもヽ(゜▽、゜)ノ

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