※女の子が最低な百合
「ヒロトくんと付き合うことになったよ」
彼女の瞳が揺らいだのを、私は見逃さなかった。
「……そうか」 「うん、玲名ちゃんのおかげ。ありがと!」 「気にしなくていい」
擦り寄る私の頭を、玲名ちゃんは優しく撫でる。その手はいつもより少しだけぎこちない。見上げると、彼女はわらっているのに何だか悲しそうだった。
私は玲名ちゃんをあいしている。
けれど私の一方的で異常な愛で彼女の世界を潰してしまわないように、それは長い間心の奥底に息を潜めて隠れている。そのかわり私は彼女の欲するものを片っ端から食い荒らしていった。新しい服、ぬいぐるみ、それから好きな人。そうして私は彼女の視線を無理矢理自分に向けて、満足して生きてきた。
そうして今日も、私は彼女が思いを寄せる基山ヒロトくんと彼女の視線を奪い取ったのだ。
「本当に玲名ちゃん、優しい」 「……そうでもない」 「私男の子だったら玲名ちゃんお嫁さんにしたいもん。優しくて、美人で、最高のお嫁さん!」 「ありがとう、なまえ」
彼女は私を見ない。今のだって、私ができる精一杯の告白なのに、彼女は女の子同士の可愛いお戯れ程度にあしらうのだろう。少し悔しくなったので、浅ましい私はまたも劇物を投下した。
「今からね、ヒロトくんと出かけるの!」 「ああ、いってらっしゃい」 「うん!いってきます!」
穏やかに手をふる玲名ちゃんは私のことを無邪気な子だと思っているのだろう。だから、怒らないし 怒れない。普通だったら憎悪の感情くらい向けられて当然のことをしているのに、何年もの間彼女が何か私に非難めいたことを言うことはなかった。
「お待たせ ヒロトくん!」
ヒロトくんは談話室のソファに腰掛けていた。ヒロトくんは普通に好きだ、でも何の小細工もしなくても玲名ちゃんに視線を向けてもらえるヒロトくんは、ちょっとズルイ。
「いや、今来たところだよ」 「玲名ちゃんと話してたら遅くなっちゃった」 「君たち本当に仲が良いよね」
仲が良いのではない、それでは足りないのだ。こっち向いて欲しいから話をするし、玲名ちゃんに近づく。
「うん!私玲名ちゃんが一番大好き!」 「はは、妬けるなあ」 「ヒロトくんとは別の、大好きだからね!」
英語で言うならヒロトくんがライクで、玲名ちゃんはラブ。
「知ってるよ」
もしも本当のことを言ったなら。彼女は私に溜まり溜まった感情をぶつけてくれるのだろうか。負の感情だって構わない。それでも強い感情をぶつけて、私をその目に映してくれるのならば私は目一杯幸せになれるだろう。卑怯者、最低だって、泣くんだろうなあ。きっと玲名ちゃんの泣き顔はきれいだ。
「うん、大好きだよ」
そうして私を蹴って叩いて罵って、それから
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