夜空の雲を裂いて、飛行機みたいな速さで進む。所々に淡く光る青い筋が通る彼の姿は美しい。


「今日も、見つけられなかったね」


その速さのせいで風の音がビュウビュウうるさいので、出来るだけ顔を近づけて、大きな声で話しかける。しかし聞こえなかったのか、いつものような反応はない。


くしゅん。まだまだ秋と言えど、上空を物凄いスピードで移動し、そのうえ碌に防寒もせずいるのだから当然肌寒い。
背中の上でずびずびやっていると、ゼクロムは気付いたのか、速度をゆるめる。


「ありがとう」


優しいね、と背中を撫でると返事の代わりにぱりぱりっと電気がはぜる。


「……早く会いたいね」


こうして一人と一匹で旅を始めて、もう数ヶ月が経つ。
ゼクロムは、自分の片割れを探し、私はその片割れと共にイッシュを去った人を探している。

色んな所を探してきたが、中々彼らに巡り会えずに、いつの間にかゼクロムとも友情のようなものも芽生え、現在に至っている。

彼に会えたら何を話そう。お友達になりたいな。そう思うほどに、じんわりと期待に心臓は熱くなる。

でも、不安要素だってたくさんあるのだ。ゼクロムはレシラムに会えたらどうするのだろうか。とか、また石に戻ってしまうのか、とか。


「Nと、レシラムに会えたら……ゼクロムとはさよなら?」


首にそうっと抱き着くと、ゼクロムは少しだけ目を丸くして ぱち、と弱く電気を飛ばした。私はNじゃあないから、ゼクロムの真意は分からない。


「私ね、Nとお友達にもなりたいけど、ゼクロムともずうっと一緒にいたいよ」


……我が儘かな。纏わる力を少し強めて呟くと、享受か拒絶か知らないが、ゼクロムはぐるると喉を鳴らした。
願わくば同じ気持ちだと良い。そのときまで分からないけれど。


「ゼクロム今、白いのが飛んでった!」