「女の子ってなんであんなに可愛いんだろう」

放課後のグラウンドを窓から眺めて、哀愁を漂わせたみょうじがぽつんと呟いた。
俺に言わせれば、女子なんか非単純 不明快の訳の分からない自分とは全く別の生き物だ。おまけにすぐに嘘をつく。全く以って理解不能な行動をとる。

「だっからお前も源田が好きだって言や良かったんだろーが!」
「無理無理!絶対無理!そんなん言える空気じゃなかったもん!」
「馬鹿か!そんな弱腰じゃ源田とられるぞ!」
「! うう……どうしよう……」
「……はあ」

煮え切らないみょうじに、今日何度めかの深いため息を吐いた。心配をしているんじゃない、俺は苛々している。このお人よしの馬鹿の訳の分からん行動は今に始まったことではないが、まさか自分が好きなヤツとの仲を取り持ってくれと言われて首を縦に振るほどだとは、思わなかったのだ。

「お前も源田が好きなんだろ」
「う うん、でもね、あのね」
「なんだよ」
「私がいいよって言ったらね、ありがとうって、すごく嬉しそうにしてくれたから……」
「……で?」
「私はもう……い、いいかなって」
「諦めんのか」
「う、 ん だって仕方な いったああい!!」

手が出た。仕方がない、苛々したのだ。さんざん別に聞きたくもない相談を聞いてきてやったのに、諦めるだと。今までの俺の努力はいったいなんだったんだ、ボランティアか。

「それでいいの?みょうじは」
「……だってね、お似合いなの」
「は?」
「その子可愛いの、優しいし、頭いいの。私じゃ勝てないくらい凄いの」

「源田くんもか、かっこいいし、優しいし……だからね」

頑張って忘れるとみょうじは言った。無理に笑おうと口角をあげるみょうじに、なんだか居た堪れなくなって、また何度めかのため息をはいた。眉毛なんかへにゃへにゃに下がっているから、とても見れたような笑顔じゃないことは、本人は気付いてないだろう。悲しいのをうまく隠して、笑えていると思ってる。こうやってみょうじはすぐに嘘をつくのだ。

「一応、応援してやってたんだけど 俺」
「いつも話聞いてくれてたのにね、ありがとね、……ごめんね」
「まったくだこの馬鹿」
「知ってる」
「間抜け」
「 うん」
「偽善者」
「……おっしゃる通りで」

「……辛かったな」
「! 佐久間ぁ〜……」
「よしよし、泣け」

正面のみょうじは俺に撫でられるがままにされ、ひんひん泣いている。泣くほど好きだったのに、こんなことで諦めるとか本当ばっかじゃねーの、くだらねー。
あーあ、好きな女ってなんでこんなに可愛いんだろ。