||| plus alpha



アイオリアに手を引かれたシュラが戻ってきた時、アイオロスは思わず小さく吹き出した。
「これは、また派手にやったなぁ」
どんな場所を歩いてきたのか、軽く散歩に行っただけの二人は泥だらけの上に頭や肩など至るところに葉をくっつけていた。
アイオリアに至っては、服の裾が破れているのはアイオロスの気のせいではないだろう。
微かな苦笑を浮かべたまま、シュラの短く切り揃えられた髪についた葉を払ってやる。
「すみません…」
分かりやすいほどに肩を落として謝る姿がいじらしくて、ついその艶やかな髪をわしゃわしゃとかき混ぜる。
「あ、アイオロス…っ」
慌てて耳を真っ赤にする姿まで可愛いと、口元がだらしなく緩むのが自分でもよく分かった。
「なに、気にするな。どうせ、リアに付き合わされたのだろう?」
「んっ!」
何故か誇らしげに片手をあげる弟を抱き上げ擽れば、甲高い悲鳴があがる。そのまま逃げようするアイオリアとしばらくじゃれあっていれば、シュラの肩からも力が抜けたのがわかった。
「こんなことだと思ってな、風呂を準備してあるから、入っていくといい」
「ですが…」
「そう遠慮するな、元はといえばリアが原因なんだし、な?」
それでも遠慮するシュラの片手を何を思ったのかアイオリアが握る。
にっこー、と姉のように慕う少女を見上げる笑みは無邪気そのもので。

「いっしょに入ろうよ、シュラ」

投下された爆弾にピシリ、と音を立ててアイオロスの動きが固まる。
「え、でも…、仮面があるし…」
「リア、背中あらうのうまいんだよ。シュラのあらってあげるね」
シュラの困惑などお構いなしに、アイオリアが無邪気に笑う。
足元にじゃれつく幼い獅子からのおねだりに、シュラの心がぐらつくのが仮面越しにもはっきりとわかった。
しょうがない、と彼女が小さくため息をついたところで
「兄ちゃん?」
わしゃりと、大きな手がアイオリアの頭を撫でた。
いつもより幾分か強い力に唇を尖らせる弟に、膝を曲げて視線を合わせたアイオロスの顔にはいつも通りの快活な笑みが浮かんでいた――目元以外、は。

「リア、ワガママを言ってシュラを困らせては駄目だろう?風呂は兄ちゃんと一緒に入ろうな」
「……………うん」






後に獅子座のアイオリアは語る、

「あの時の兄さんの笑ってない目ほど恐ろしいものはなかった」

と。


June 07, 2013 11:19
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