||| plus alpha 赤い目は、異形の証だと言われた。 銀の色素の薄い髪と合わせて、不気味だと疎まれ、不吉だと忌まれてきた。 だから、他人と違うその赤が大嫌いだった。 目の前のソイツが物珍しげに見ているのが自分の赤い目だと気づいたとたん、うんざりとした気分になった。 「何、見てんだよ」 また気持ち悪いだの、不吉だだのと言われるのかと思うと自然と声に刺が滲む。 「血の色みたいで気味悪いのが、そんなに珍しいのか」 傷つけられる前に傷つける。それが子供なりに自分の身を守ろうと、考えた術だった。 そうして近寄るな、と全身で拒絶すれば大抵の相手は嫌そうに眉間に皺を寄せてもう寄ってこなくなるから。 なのに。 ちのいろ、とソイツは声に出さずに呟いた。その言葉を噛みしめるように、ゆっくりと黒瞳が瞬いて 「あぁ、そうだな。血のような――生命の色だ」 ふわりと、笑った。 「……は、」 「俺は、嫌いじゃない」 何を言われたのか、わからなかった。耳にしっかりと聞こえているのに、突拍子もない言葉に頭で理解するまでに時間がかかった。 言いたいことを言って満足したのか、ソイツは踵を返して闘技場の方へと歩きだしていた。 「…おい、待てよっ」 訳もわからないままに、遠ざかっていくその背中を反射で追いかける。 「お前の、名前は?」 それが、それからなんだかんだと長い付き合いとなるソイツとの出会いだった。 † 突発で浮かんだ、蟹と山羊の初対面ネタでした このあと山羊が「自分から名乗れ」的なことを言ってそこから取っ組み合いの喧嘩になる、所まで妄想しましたが長くなりそうなんでざっくり割愛しました 気が向いたら、蟹は覚えてるのに山羊はすっかり忘れているというネタにして書けたらいいなぁ、と思ってます April 12, 2013 13:47 back |