アイルは自分の命よりも仲間の命を優先する奴だった。どんな危機的な状況でも、助けられるかどうかさえ分からない状況でも飛び込んで行くような奴だった。

「リヴァイ。私は死なないよ、」

決まって、アイルはそう言う。どくどくと血が溢れ、呼吸さえも上手くできないこの状況でも。

「...もう喋るな」
「リヴァイ、」

伸ばされた手が頬に触れる。

「泣きそうな顔してる」

何をへらへら笑ってんだ。死なないんじゃなかったのか?なのに、なんだその顔。もう、真っ白じゃねえか。

「死ぬな」

#mane#の瞳から少しずつ光がなくなってゆく。頬に添えられた手をぎゅっと握り締め、何度も名前を呼んだ。

「アイル、聞こえるか」
「...うん、聞こえるよ」
「海、見てぇんだろ?」
「......うん、見た、い」










「リヴァイは知ってる?海ってね、普通の水じゃなくて、舐めるとしょっぱいんだって」
「...どっかの本で読んだことがあるが、信じられねぇな」
「私もそう!だって、海って池よりも川よりももっともーっとおっきいんだって!それだけでも信じられないもん!」
「...まあ、思うが、多分デマだな」
「え!?なんで!?」
「壁外に出た時の草原を考えてみろ。それくらいのでかい水溜りがあると思うか?」
「...確かに」
「だろ?」
「...んー、でもさ、」



「この世界は...、壁の外は、私達が想像しているよりもでかいよ、きっと!だから、あるよ!海!」



なあ、アイル。お前はこんな所で死ねないだろ?
想像しているよりも、さらにでかいこの世界を見てやると言ってただろ?
海を、見たいと、



「...なのに、てめぇの身体、カチカチじゃねえか」



例え、広い世界を知れたとしても、海の味をこの舌で感じることが出来たとしても、お前がいなければ何の意味も無い。
この世界にお前がいなければ、何の意味もねぇんだよ、馬鹿野郎。






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