生温い風。夜になったというのに、気温は昼間とさほど変わらないように思える。ついさっきシャワーを浴びたのに、既に体はじっとりとベタついている。だから夏は嫌いだ。

「でも、スイカは好き」
「あ?」

怪訝な顔を浮かべるリヴァイから、しゃく、と涼しげな音が鳴った。
ハンジから差し入れされたスイカはよく冷えていて、身体にスッと染み渡ってゆく。ベランダで食べようと、提案して正解だった。生温い風が、今は心地良い。

「...種、飛ばしていいかな?」
「明日の朝、てめえが掃除するならな」

ベランダから身を乗り出して、止まる。しゃくしゃくとスイカを食べ進めるリヴァイの顔は本気だ。うん、やめとこう。本当は豪快に飛ばしてやりたいところだけど、朝から掃除はしたくない。

「...あ!でもさ、もしかしたら、」
「生えてこねえぞ」
「...ですよねー!」

新たなスイカに手を伸ばしながら、リヴァイがさらりと言った。来年の夏は、私が飛ばした種のお陰でスイカが生えてくるんじゃない?って言いたかったのに。さすがリヴァイ。私の考えてることよくわかってるー!なんて、感心してる場合じゃない。いつのまにか皿の上のスイカがなくなっている。ちょ、私まだ一個しか食べてないんだけど!

「ちょっとリヴァイ!スイカもうないんだけど!」
「まだあるだろ。切ってこい」
「はあ!?なんで私が...!」

理不尽!とギッと睨み付けるとギッと睨み返された。...はいはい、分かりました。切ってくればいいんでしょ、切ってくれば!!!

「...っていうか、リヴァイは種どうしてんの?」
「飲み込んでる」
「...え!?飲み込んでるの!?」
「いちいち口から出すの面倒くせえ」

面倒臭いってあんた、いくらなんでもそれはないでしょ。皿を持ち、部屋の中へ一歩足を踏み入れ、振り返る。

「...お腹からスイカ」
「生えてこねえよ」

目が合い、ふっと笑いが溢れる。大嫌いな筈の夏が、今日はこんなにも楽しい。




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