「うるせぇ!!!!!!!」 テント内にリヴァイの怒鳴り声が響き渡る。 私はその声で目を覚ましたわけではなく、頭皮に走る激痛で目を覚ました。 「い、いたああぁぁ!!!!!なに!?なんなの!?」 眠気も一気に吹っ飛ぶくらいの物凄い力で髪の毛を引っ張られた。 目に飛び込んできたのは、リヴァイの物凄い形相とリヴァイを必死に抑えるエルド達の姿。 一体何があったのか。稀に見るイライラレベルMAXのリヴァイの表情に冷や汗が流れる。 「ど、どうしたの?」 「てめぇのイビキがうるさくて眠れねぇんだよ!!!!!」 「え!?イビキ!?」 「ま、まあ、兵長落ち着いて、」 「初日からこれだぞ?落ち着けるわけねぇだろうが!」 宥めるペトラに「あと何日このテントで一緒に寝ると思ってんだ!!!!」とリヴァイが声を荒げている。 っていうか、イビキ? 私、イビキかいてるの?? 「...あのー、何かの間違いでは?」 「あ?地響きするくらいでけえイビキかいてる奴が何言ってんだ?」 「う、うそだああー。そんなことあるわけ...」 ないじゃん、とみんなに視線を移せば、笑顔が引きつっている。 ...まじか。私、イビキかいてるんだ。 「...え?まじ?どんなレベル?」 「...え!?いや、俺は眠れますけど、」 「おい、エレン。こいつに気なんて使わなくていい。今すぐ殺したくなるレベルだって、はっきり言ってやれ」 「殺したくなるレベル!?」 「いえ!そんなレベルでもない「あるだろうが」 ぴしゃりとリヴァイが遮る。 私とリヴァイに挟まれて、エレンは今にも泣き出しそうだ。 そんなエレンをペトラがそっと救出しつつ、私にも助け舟を出してくれた。 「アイルさん、疲れているんですよ」 「疲れてるのはみんな同じだろうが」 「まあ、そうですけど...。でも、アイルさんはいつも訓練が終わった後も一人で自主練してますし、」 「それでこれか?随分、迷惑な話だな」 ペトラがリヴァイ相手に必死に頑張っている。 ありがとう、ペトラ。私はいい部下を持ったよ。 そんなペトラを見ながらうるうるきていると、ピンと閃いた。 「っていうか、眠れないなら耳栓すればよくない!?」 我ながら、いいアイディア!!と声を張り上げたが、リヴァイの額にピキッと青筋が浮かび上がる。 また怒鳴られるか!?と身構えたが、リヴァイはやけに落ち着いた様子だった。 みんなも静まり返り、私達をじっと見守っている。 「ちょ、ぎゃあ!!」 突然、首根っこを掴まれ、テントから放り出された。 みんなが兵長!と声を上げたがもう時すでに遅し。 冷たい草の上に体が転がる。 なんて酷い男だ、と半泣きで顔を上げれば寝袋が飛んで来た。 顔面直撃。 「ぶっ!!」 「耳栓なんかとっくにしてんだよ」 「え!?」 てめぇは今日から外で寝ろ、と冷たく見下ろされ、リヴァイがテントの中に入っていく。 私はというと、既に耳栓をしていたという事実に開いた口が塞がらなかった。 耳栓しても聞こえてくるなんて、私のイビキ、騒音レベルじゃん...! 自分のことなのに、自分だけが知らないなんて...。 がっくりうな垂れていると、リヴァイがテントからひょっこり顔を出した。 「...オイ、もっと離れろ」 「え?」 「そこじゃ、テントの中に響いてくる。さっさと消えろ」 それだけ言い残すと、またリヴァイがテントの中に消えていった。 ...駄目だ。言い返す気力もテントに帰る勇気も出ない。 めそめそと寝袋を抱え、立ち上がる。 ...向かうは、ハンジのテントだ。 |