「愛の証が欲しい」

そう言ってリヴァイの目の前で右手をパッと広げてみたけれど、本に落とした目線を一向に上げてくれない。

「ペトラ、可愛い指輪してたの」
「…」
「付き合って1年記念日に彼氏に貰ったんだって」
「…」
「ちょっと!!リヴァイ、聞いてる!?」
「聞いてない」
「聞いてるじゃん!」

むすっとしながらリヴァイを睨み付ければ、やっとで顔を上げてくれた。
あ、面倒くせぇって顔してる。

「アイル。手、貸せ」

はあ、と重い溜め息を吐きながらリヴァイが手を差し出してきた。
ドキン、と胸が高鳴る。

「は、はい」

そっとリヴァイの手の平に自分の手を重ねる。
もしかして、ちゃんと用意してくれてたの?
どんな可愛い指輪が登場するのか、ドキドキしながら薬指を見つめていると、徐々にリヴァイの口許へと近付いていく。
指輪をはめる前に、薬指にキスを落とすつもりなのだろうか。
リヴァイって意外とロマンチスト…って、え?ちょっ、待って、何で口開けてんの―


ガリッ


「いったあああぁぁ!!!!!!」

噛んだ…!リヴァイが、私の指、噛んだ…!!!!!
涙目になりながら勢い良く振りほどき、薬指を確認すれば、くっきりとリヴァイの歯形が残っていた。
よかった。指はあった。

「ちょっと…!!!!なにすんのよ!!!!!」
「指輪なんかよりいいだろ」

…嘘でしょ。指輪のつもり?
さらっと言ってみせるリヴァイに呆然としながら、もう一度薬指に視線を落としてみる。
そこにはキラキラと輝く指輪ではなく、リヴァイの歯形に沿ってぷつぷつと血が滲んでいた。

「これが、リヴァイの愛の証?」
「ああ」

そっと手を取られ、上目使いで、ちゅ、と私の血液を吸うリヴァイにどくんと心臓が脈を打った。
…なんて男だ。歪んでる。
だけど、キラキラと輝く指輪なんかよりも愛の証っぽくていいかもしれない、なんて思ってしまった私も相当歪んでると思う。

「…これ、いつか消えちゃうよ」
「安心しろ。消えたらまた噛んでやる」



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