窓の外では、新兵達が熱心に訓練をしている。こんな寒空の下でよく頑張るなぁ、なんて、私は暖かい部屋の中で暖かいココアを飲みながら、ぼんやりと眺めていた。

「さぼってんじゃねぇぞ」

不機嫌そうな声が背中に突き刺さる。折角一人でまったりしていたのに。むすっとしながら振り返れば、これまたむすっとしたリヴァイの姿。

「残念ながら、もう書類は纏め終わりましたー。リヴァイと違って出来る子だから、私」

嫌みたっぷりに言ってやったら、頭を叩かれた。

「いたいっ!」
「…てめぇはいつも一言多いんだよ」

きっと睨まれ、私の隣に並ぶ。そんなこと言うけど、リヴァイはすぐに手を出す癖を直してほしい。

「新兵か」
「そうだよ。今年は可愛い子が多いね」
「…別に、興味ない」

言葉通り、本当に興味がなさそうに窓の外を眺めている。私が言うのもなんだけど、リヴァイは本当に女っ気がない。性格はちょっと癖があるけど、顔はそこら辺の女の子よりも綺麗だし、人類最強と英雄視されるほどの実力を持ってるし。一人でいるなんて勿体無い気がする。
なんて考えながら、いつのまにか私の視線は窓の外から隣にいるリヴァイへと移っていた。

「…何見てんだ」
「いや、勿体無いなぁって、」
「何がだ」
「彼女作らないの?」

そうリヴァイに問えば、少しだけ目を見開いた。が、直ぐに眉間に皺をぐっと寄せ、面白くなさそうな表情を浮かべる。もしかして、言っちゃいけないこと言っちゃったかなあ、なんて少しドキドキしながら見つめていると、リヴァイの顔がふっと近付いた。

(え?)

ちゅ、と可愛らしいリップ音と唇に柔らかい感触。本当に一瞬の出来事で、リヴァイは何事も無かったかのように、窓の外を眺めている。

「リ、リヴァイ、」
「なんだ」
「なんで、今…キス、」
「…」

まだ微かに残るリヴァイの唇の感触に顔に熱が集中していく。リヴァイはそんなことをいちいち聞くな、と云わんばかりの表情で私を見つめてきた。

「…アイル」
「な、なに?」
「…鈍感すぎるのも、いい加減にしろ」

深く溜め息を吐くリヴァイに、やっとでその意味を理解した私は、持っていたマグカップを落としてしまった。



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