ピピピ、と目覚ましのアラームが朝を知らせた。



昨日の夜に飲んだ酒が残っているせいで、アラームを止める気力も出なかった。
ペトラのペースについていった私が馬鹿だったと今さら自己嫌悪する。
二日酔い特有の頭痛に眉をしかめながら、鳴り響くアラームを無視し、もぞもぞと寝返りを打った。


「ピピピピピ…バンッ!」


アラームを勢い良く止める音にびっくりして目を開ける。
ヘッドボードに置いてある目覚まし時計にうつ伏せのまま手を伸ばす男の姿が目に飛び込んできた。


(…な、な、なんで!?私のベッドにお、おとこ!??)


あまりの衝撃に声も出ない。
突如、その男がむくりと顔を上げた。


「…うるせぇ」


気だるそうに前髪をかき上げながら、アラームに文句をつける男。
その横顔に息が止まった。


(まさかの兵長!!!!!!!!!)


「ななななななんでっ!!!!!!」


ガバッと起き上がり、後ずさる。
昨日の夜の出来事を思い出そうと、ぐるぐると記憶を辿った。


えーと、ペトラと2人で飲んでたんだよね?
で、その後は…?
あ!そうだ!兵長と団長が2人で酒場に来たんだ!
「一緒に飲めば奢ってもらえるんじゃないうふふ」とかぺトラと言ってて、こっちのテーブルに呼んだんだった!

それからそれから、と顔面蒼白になりながら必死に記憶を辿っていると、兵長が、肩肘を付いて私をジッと見ていることに気付いた。
顔がカッと熱くなる。
私は、この人と…、一緒のベッドで寝ていたの!!??


「おい、ナマエ」
「は、はいっ!」
「てめぇ、まさか何も覚えてないのか?」


眉間に皺を寄せ、怪訝な表情を浮かべる兵長。
その意味深な言葉に、息を呑んだ。
恐る恐る兵長の体に視線を移すと、布団の隙間から覗かせる鎖骨。
くらり、と目眩がした。
下半身は確認できない(する勇気もない)が、確実に上半身は裸だ。
今度は自分の格好を確かめる。
…いつものパジャマ姿だ。
ホッと胸を撫で下ろす。
いや、待てよ。
…パジャマ、いつ着た?


うわあああああ!!!!!!!
何も思い出せないよおおお!!!!!!


「へ、へいちょ…」
「なんだ?」
「ままま、まさか、私達…男女の関係には…なってない……ですよね?」
「……………」
「わあああぁ!!!黙りこまないでくださいいぃ!!!!!」


涙ぐみながら、兵長の肩を揺さぶる。
パニックに陥いっていると、兵長に突き飛ばされた。


「ぎゃ!!」
「…誰がてめぇなんか抱くか」


潰れたお前を運んでやっただけだ、と睨まれる。


「帰るのが面倒だったから、ここで寝ただけだ」
「そ、そうだったんですか…」


すみません、としょぼんと頭を下げた。
それもそうだ。兵長が私なんかを抱くわけないじゃないか。
120%ありえないのに、もしかして…と慌てふためいた自分が恥ずかしい。
逃げるように浴室へと足を向けた。




はあ…朝からどっと疲れた。
パサリ、とパジャマを脱ぎ、鏡の中の自分を見る。
化粧はぐちゃぐちゃだし、むくんでるし、あまりにも酷すぎる顔に溜め息が漏れた。
さっきまで、こんな顔で兵長と話していたのか…。
落ち込んでいると、ふと、首筋や胸元に無数の赤い痕ができていることに気付いた。
体が硬直する。



(…これって、キ、キスマーク?)



「きゃあああああ!!!!!!!!へ、へいちょおおぉぉ!!!!!!!」


真っ赤な顔で、浴室を飛び出し、ベッドへと駆け寄る。
パニクる私を余所に、気持ち良さそうにすやすやと二度寝をする兵長を叩き起こした。




レンさんへ^^





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