目が覚めたのは3日後だったらしい。
目を覚ますなり、ハンジはぐちゃぐちゃの顔で抱き付いてくるし、エレンは声を押し殺して泣いていた。
リヴァイはいつも通り、無表情だ。
奇跡の生還を遂げたんだから、少しくらい表情を崩してくれたっていいのに。

エルヴィン達を呼びにいったのか、バタバタとハンジ達が部屋を去って行く。
リヴァイと2人だけになったがどちらとも何も喋らず、私はただベッドの上でぼんやりと天井を眺めていた。

巨人の群れに突っ込んでいった結果がこれだ。
私は頭で考えるより先に、いつも体が動いてしまう。
壁外に出る度に危険な目に合い、そしてリヴァイに怒られた。
ただ今回みたいなことになったのは初めてだった。
生死をさまようくらいの怪我。
みんなにどれだけ迷惑と心配を掛けたのだろう。
リヴァイの言うことを聞いておけば良かったと初めて思った。もう遅いけど。

ぎしりとベッドが沈む。
リヴァイがベッドに座り、私を見下ろしてきた。

「…なによ」

目を細めて睨み付けてくるリヴァイにぽそりと呟けば、はあ、と重い溜め息を吐いた。
とうとうリヴァイに呆れられたのかもしれない。
それだったら怒鳴られて、顔をひっぱたかれた方がマシだった。

「お前にはもう何も言わない」

心臓がきゅうっと締め付けられた。
完全に呆れられた。
冷たい瞳で見下ろしてくるリヴァイを私は見ることが出来なかった。
お願いだから、そんな目で私を見ないで。

「…だが、これだけは分かってろ」

自然と目に溜まった涙を、リヴァイが指で拭った。

「俺にはお前が必要だ」

たった一言の台詞が、私の心に響いて仕方がなかった。
涙が溢れる。
もうこんな馬鹿な真似は止めよう。絶対に。
リヴァイが私を必要としてくれる限り、死ぬことは許されないのだ。

「リヴァイ、ごめ、ん」
「ああ」
「本当、に、ごめ、ん」
「分かったから、もう泣くな」

袖口で乱暴に涙を拭ってくれるリヴァイに、涙が止まるはずがなかった。



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