「おはようございますっ!!!!!」
「お前、裏庭の草むしり決定な」

その言葉に、がっくり膝から崩れ落ちる。化粧もせず、髪の毛も整えず、息を切らして広間に降りてきたのに「規律を乱した罰だ」と、軍手を投げ渡された。
時計を見ると、5時40分。リヴァイ班の起床は5時半と決まっているけど、10分くらい…いいじゃない!!!
ペトラに助けを求めようと、視線を移す。肩がカタカタ震えていた。畜生、俯きながら笑ってるな…!

(…っていうか、今日は休日だし!規律とか、元ゴロツキの言う台詞じゃないし…!)

ふてくされた顔で兵長をじとーっと見つめるも、背筋が凍るほどの鋭い目付きで返され、泣く泣く軍手を手にはめるしかなかった。


◆◇◆


「ちくしょー!リヴァイの奴め!!!!」

生い茂る草、草、草。
むしってもむしっても一向に減らない。
苛々が募るばかりで、むしる手に力が籠る。

「絶対に、あいつの上になって、コキ使いまくってやる!!!!!」

むしった草を、勢いよく後ろに放り投げた。

「…いい度胸だな」

どきんっ!

聞き慣れた声に冷や汗が流れる。恐る恐る振り向けば、兵長が仁王立ちで立っていた。…しかも、顔には私が放り投げた草が貼り付いている。

(今日は厄日かああぁ!)

「テメェが俺の上に立つなんて、死んでも無理だ。諦めろ」
「ふ、ふぁい…」
「…まあ、それはいいが」

頬に貼り付いた草を取り、地面に投げ捨てたと思うと、胸ぐらを掴まれ、グイッと引き寄せられた。

「さっき、俺を呼び捨てにしてただろ」
「(ひいいぃっ!!!!!)」

まさか、聞かれてたなんて…!至近距離で睨み付けられ、あまりの恐怖に体が動かない。こ、殺されるー!!!!

「き、気のせいですよー」

無駄だとは思いつつも、ハハハ、と乾いた笑いで誤魔化してみる。

「…ほぅ。どうやら、躾が必要みたいだな」
「…え?」

兵長の口端が少し、上がった。心臓が跳ね上がる。段々と距離を詰めてくる兵長に、一気に顔が熱くなった。

(え、え?やだ!キスされ―)

覚悟を決め、目をぎゅっと瞑った。

ゴツンッ!

「いだっ!!!!!」

まさかの、頭突き!胸ぐらをパッと離され、地面に崩れ落ちた。

「…はっ。キス、されるとでも思ったか?」

勝ち誇ったような薄い笑みを浮かべ、見下ろしてくる兵長に、私は悔しさと恥ずかしさで顔を上げることが出来なかった。
…やっぱり兵長には敵わないみたいです。



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