リンリンと鳴く虫の声。 空を見上げればまんまるのお月様。 なかなか眠りにつくことが出来なかった私は、リヴァイを誘い、夜道を散歩していた。 半ば強引だったにしても、こうして付き合ってくれるリヴァイは優しいと思う。 「たまにはいいね」 「なにが」 「夜中のデートも」 ニヤニヤしながらリヴァイの顔を覗き込む。 眉をしかめる訳でもなくリヴァイは無表情のまま、私に手を伸ばした。 「デートじゃねぇ」 「いだい!」 ぎりりと頬をつねられた。 「照れなくてもいいの…いだい!分かった!散歩!ただの散歩です!分かったから今すぐこの手をどけてくださいいだだだだ!!!」 分かればいいと睨み付けられ、やっと頬が解放される。 さっきの言葉は訂正する。 リヴァイは全然優しくない。 冗談も通じない頭のかたーい男だ。 「もう帰るぞ」 「ええ!もう!?」 スタスタと寮に向かい足を速めるリヴァイの後ろを慌てて追い掛ける。 (まだ帰っても眠れそうにないんだけどな…) 眠れない原因は、3日後に控えている壁外調査のせいだ。 近付くにつれて、緊張と恐怖が入り交じり、興奮して眠れなくなった。 悟られないように、明るく元気に振る舞っているけど、本当は、 「アイル」 立ち止まり俯く私に、リヴァイが足を止めた。 「眠れないなら、俺の部屋に来ればいい」 わざわざ散歩なんて面倒癖ぇんだよ、とふいっと顔を戻し、また足を進める。 (眠れないなんて、一言も言ってないのに…) 口元が緩む。 やっぱりリヴァイは優しい。 タタッと駆け寄り、リヴァイの腕を掴んだ。 「一緒に寝てくれるの?」 「寝るわけねぇだろ」 お前は床だ、と腕を振り払われた。 「…床って!お願い!せめてソファー!」 床だ!ソファーだ!と静かな夜に、私とリヴァイの声が響き渡る。 リヴァイと一緒だったら、眠れない夜を過ごすこともなくなりそうだ。 それでも眠れなかったら、リヴァイのベッドに潜り込んでやる。 |