「アイル、後でな?」

訓練後、すれ違い様にこっそり呟いた。
顔を真っ赤にして、コクリと頷くアイルに少しだけ罪悪感が湧き上がる。

俺は、ミカサが好きだ。
なのに、俺は自分の欲をアイルに吐き出している。
アイルに好きだと告白されたあの日、俺はアイルを抱いた。
何故抱いたかと問われれば、性に対する好奇心。
顔を真っ赤にさせて想いを告げてきたアイルが純粋に可愛いと思ったし、アイルなら抱けると思った俺は、頭では駄目だと思いつつも手を出してしまった。
アイルは拒まなかった。
ミカサが好きだとハッキリ告げても、それでもいい、と俺を受け入れた。

アイルのことは、好きでも嫌いでもない。
ただ、行為の最中のアイルは堪らなくそそった。
表情も、声も、全部。
普段からは想像も出来ないくらいエロい姿に、いつも無我夢中で抱いていた。
抱く度に、アイルを傷付けていることは分かっている。
体だけの関係が、後にアイルをどれだけ苦しめることになるのかも。
なのに、一度知ってしまった快楽から、俺は抜け出せなかった。

「ジャン」

瞳を潤ませ、俺を呼ぶアイルの唇を塞ぐ。
柔らかくて、温かい。
もし、この唇が他の男のモノになったら、とふいに頭を過った。
瞬間、どうしようもないくらいに全身が熱くなる。
嫉妬にも似た感覚に、動揺した。
この感情は何だ?
唇を離し、アイルを見つめる。

「…ジャン?」

どうしたの?と、乱れた呼吸を整えながら、俺の頬に擦り寄せるアイルに心臓が鳴った。
俺は、一体アイルにどんな感情を抱いているんだ?

「アイル、」

薄く開いた唇に、無理矢理舌をねじ込む。
ハッキリとは分からないが、前とは違う感情が俺の中にあることは確かだった。



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