「おい、アイル。そろそろ帰れ」 男がいる癖に、何故俺の部屋で寛いでいるのか。 ベッドでゴロゴロと本を読むアイルに向かい、溜め息を吐いた。 「なんでよー、いいじゃん」 「テメェの男に誤解されると面倒くせぇんだよ」 そう睨み付ければ、本から目を離さずに、「ああ。別れたから大丈夫」とあっさりとアイルが言い放った。 「…また別れたのか」 「まあね」 アイルはいつもこうだった。 付き合ってはすぐ別れ、その繰り返し。 始めのうちは、軽い女だとアイルに対して嫌悪感を抱いていた。 が、アイルと過ごす時間が長くなるほどそんな女ではないような気がしてならなかった。 「早すぎだろ」 「しょうがないじゃん」 振られたんだから、とページを捲る音と共に、アイルの声が部屋に響き渡る。 「まあいいんだけどね。そもそも好きじゃなかったし」 「…じゃあ何で付き合う」 「断れないから」 断れないだと?好きでもないのに、それだけの理由で付き合うのか? ベッドに座り、アイルの頭を軽く叩いた。 「いたっ!」 「好きじゃないなら、振れ」 「だってー、振るの可哀想だし」 「そんな気遣いいらねぇだろうが。もっと自分の身体を大切に扱え」 「大切にしてるよ」 「してねぇだろ」 いろんな男と寝やがって、とぼそりと呟けばアイルがきょとんとした表情を浮かべた。 「私、寝てないよ?」 「…は?」 「処女だよ?しかもキスすらしたことない」 パタンと本を閉じ、アイルが続けて言った。 「付き合うことはOKしても、特に何もしてないよ。したくないし、気持ち悪いし」 だから結局すぐ振られるんだけどね、とアイルが呟く。 「じゃあ付き合うな」 「…だから断れないんだって」 「拒めるなら断れるだろうが」 「うーん。確かにそうなんだけどね…」 アイルが急に黙り、じっと俺を見つめてきた。 「リヴァイ」 「なんだ?」 「リヴァイなら、いいんだけどな」 なにが?と問えば、アイルが口端を上げた。 「分かってる癖に」 「…本気で言ってるのか?」 ぎしり、とアイルに覆い被さり、見下ろした。 脅しのつもりで、アイルの頬に指を這わせる。 が、アイルはびくともしない。 「…少しは抵抗しろよ」 「リヴァイならいいって言ってるでしょ?」 「…本当に、処女なのか?」 「食べてみればわかるよ」 |