好きなタイプは?と聞かれたら、決まって「調査兵じゃない男」と答えていた。先が見えない男と付き合うのは馬鹿らしい、そう思っていたからだ。私の夢は、ごく普通の幸せな家庭を築くことだった。


私の家に、リヴァイの同期だと名乗るハンジさんが訪れた。既に冷たくなったリヴァイを抱えて。血と泥にまみれ、変わり果てたリヴァイの姿に、これは悪い夢なんじゃないかと、ぼんやりと立ち尽くした。

「…なんで、黙ってたの?」

静かな部屋の中に、やっとで絞り出したかすれた声が響き渡った。あまりにも無関心すぎたのかもしれない。リヴァイという名前を聞いて、ピンとこないのは私くらいだということに、今になって初めて気付いた。リヴァイが兵長?人類最強?嘘みたい…。しかし、自由の翼と呼ばれるマークが刺繍された隊服が、現実を認めざるおえなかった。

「リヴァイは、君が調査兵を嫌っていることは知っていたよ」
「…じゃあ、なんで?」
「…私達、調査兵は常に死を意識しているんだ」
「……」
「今回の壁外で生き延びても、次は分からない。そんなギリギリの精神の中、私達は人の温もりを求めてしまう。…それは、いけないことかな?」

リヴァイは、君が欲しくて堪らなかったんだよ、とハンジさんは悲しげな笑みを浮かべながら、ぽつりと溢した。

死と隣り合わせの毎日の中、巨人に喰われる心配の無い私達市民よりも、温もりを求めてしまうのも、愛する人の傍にいたいという気持ちも分かる。…だけど、

残された私はどうなるの?
ねえ、リヴァイ。
あなたを失った今、私はどうやって生きていけばいいのかな。

人類の為に、命を懸けて戦ったリヴァイの死に顔を見ても、“調査兵じゃなかったら”という気持ちでいっぱいだった。ただただ、それでいっぱいだった。

調査兵じゃなかったら、死ななかったのに。

調査兵じゃなかったら、いつか結婚していたかもしれないのに。

調査兵じゃなかったら、2人の間に子供が産まれていたかもしれないのに。

調査兵じゃなかったら
調査兵じゃなかったら
調査兵じゃなかったら


だから、調査兵の男は好きになりたくなかったんだ。


そっと頬に手を添えてみれば、いつもの暖かい温もりはそこには無くて、私はその場に崩れ落ちた。



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