「お前は、俺の為に死ねるか?」

書類を提出しにきたアイルにそう問い掛けてみれば、あからさまに眉をひそめられた。

「馬鹿じゃないの?死ねるわけないでしょ」

アイルが急になによ、と書類を差し出す。
頬杖をつきながら、それを受け取った。

「…ついさっき、俺の為なら死ねる、と熱烈に告白された」
「何それ、自慢?っていうか、何で私にそんなこと聞くの?」

意味が分からない、と呟くアイルの瞳を見つめれば、パッと視線を逸らされた。
俺のことが好きなくせに、相変わらず素直じゃねぇな。
そう思いながら、受け取った書類に目を通し始めると、アイルがぼそりと口を開いた。

「でもさ、そう言う子に限って、死ねないと思うよ」
「そうか?」
「うん。本当にそう思ってるなら、口には出さない」

っていうか、出せないな。私なら。とぼそりと呟くアイルに、俺は確信する。
こいつ、俺の為なら死ねるのか、と。

「…なあ、アイル」
「なに?」
「俺は、好きな女にそんな台詞言われたくもないし、思われたくもない」
「…ふーん、そう」
「だから、そんなこと一瞬でも考えるな」
「…うん。って、え!?」

書類に目を通しながらさらりと呟いてみた。
目線を上げ、アイルを見れば目をぱちくりさせている。

「え?えぇっ!?」

やっとで理解したのか、みるみるうちに赤く染まっていくアイルの顔に口角が上がった。



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